メス猿は姉の生まれ変わりだった

 ある日カツェ寺の高僧に招かれ、家を訪ねると、なかに一匹のメス猿が飼われていた。私を見ると、歓喜の様子を見せたかと思えば、悲哀の声を発した。その様子から、この猿が姉のチュードン(Chos sgron)であることがわかった。

 幼年時代、まだ父母と暮らしていた頃、私の家は村の北のはずれにあった。ある日、何人かの子供といっしょに遊んでいると、そこへ姉チュードンがやって来た。彼女は私の首にかかっていたパンチェン・ラマに頂いた吉祥の印(糸)をつかみ、大きな平らな岩の上まで私をひきずっていき、強く放り投げた。私は裸だったので、岩の上にわが体の徴(しるし)が「奇跡的に」ついた。彼女に後悔の様子は微塵もなく、結果的に菩薩を殴打したことにもなるので、こうして畜生に生まれ変わることになったのである。

 その後私はチュードンのために、功徳を積んでよき転生を得るように願った。またカツェ寺の高僧に、私が去ったあと、すぐにメス猿はみじめに死ぬだろうが、そのときには葬送の儀礼として護摩の儀礼(チンセク sbyin sreg)を行なうよう頼んだ。



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