オデ・クンギェル雪山で青いたてがみの獅子と出会う

 鉄の兔の年(1711)の七月、サムテン・リンをめざした。山を回り、越え、オデ・グンギェル雪山('O de gun rgyal gyi gangs ri(訳注1)の頂で香を焚くため、杜松(ねず)の枝葉を集めた。山頂は風もおだやかで日和もよく、空には雲ひとつなく、遠くが見渡せた。
[訳注1:オデ・グンギェルはチベット人の始祖(四兄弟)の一人の名であり、この神山はチベット人の故郷ともいえる聖なる場所。チベット自治区桑日県] 

 山頂で神香を燃やしたあと、サムテン・リンの方向へ下っていった。途中、犬の爪のような跡が雪上についていた。それがなにかはわからなかったが、跡をたどっていくと、青い牡ヤギ(ra pho sngon po)のような獣がいた。よく見ると、それは青いタテガミをもった獅子(seng ge ral pa sngon po)(訳注2)だった。いままで獅子を間近に見たことがなかったが、じっくり見ると、不思議な生き物だった。
[訳注2:青いたてがみの獅子とは、スノーライオン(雪獅子 gangs seng ge)のこと。チベットの国章にも用いられるなど、チベットの象徴となっている] 
 



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