巡礼の旅をしながらラサへ

 エー(E)地方(現在のチベット自治区チュスン県内)では、ロンチャカル寺(Rong cha dkar)を参拝した。

 ラプ(Lab)地方では、自然に成ったマチグ・ラプドゥン(Ma gcig lab sgron)岩の下で、我執を断つ修行を一ヶ月にわたって行なった。

 このあとチューコルギェル(Chos ’khor rgyal)寺を参拝し、その向こうのギャル・メトタンにある、予言で有名な女神マクゾルマの魂の湖、ラモラツォ湖(Lha mo’i bla mtsho)を訪ねた。この湖の鏡面は、インド、チベット、ホルのすべてを、とくに(ラマと関係の深い)アラシャンのこと映し出すという。

 それからロジャといっしょにラサに到着した。そこで数ヶ月、ひそかに暮らした。

 木の羊の年(1715年)の十一月二日、私は乞食に身をやつしてペハル堂(Pe har ljog デプン寺内)を参拝した。群集に混じって本堂に入ったが、隅のほうに身を隠していた。

 すると突然、護法神ペハルの憑いたネーチュン(神降ろし)が、剣をふりかざして群集を分け、私の前にやってきて、踊り始めた。私の正体がわかったことを舞いで示したのである。私はもてあそばれているように思い、手足を動かすこともできなかったが、厳しい目つきでじっとネーチュンの目をみつめた。すると彼は四方に向かい、型どおりの演技を見せ、それから去っていった。こうして過去のことはあばかれずにすんだのだ。



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