チベット占星術 

3章 チベット占星術の基礎 

 

 チベットの占星術はツィリク(tsi rik)、すなわち、算術の科学と呼ばれる。それは占いの技術であるだけでなく、時間のリズムや周期の研究のためにも用いられる。そこからチベットの年代記や暦の編纂がおこなわれるが、それはチベット占星術師の仕事の範囲内である。

 占星術は修辞学などとともに、5つの第二科学(小五明 rig gnas chung ba lnga)のひとつである。それは診断を下すときの、また薬の調合や処方をおこなうときの縁起のよい時機を決定する目安を提供していて、伝統医学の価値のある補助材料である。仏教やボン教の儀礼がおこなわれるとき、その準備や実施のタイミングを知るには、占星術の知識が必要とされる。誕生や結婚、死など人生周期の重要な局面にも、占星術は決定的な役割を果たしている。

 占星術はこのように、チベット人の日常生活のなかのあらゆる面と関わりがあり、宗教生活には不可欠なものである。それゆえ仏教および仏教的生活における占星術の関わりを理解することが重要である。