バガン壁画礼賛 バガンで途方に暮れる 
<ローカテイッパン寺院>(1) Lokateikpan Paya














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ローカテイッパン寺院  

 もし壁画がなかったら、ローカテイッパン寺院は千数百のだれも気にかけないほとんど廃墟と化したパヤーのひとつだったろう。しかしこの壁いっぱいにぎっしりと描かれたフレスコ画によって、バガンでも稀有な存在なのである。

 この崩壊の危機に瀕している寺院は、1150年頃、シトゥ1世(在位11131170)のもとに建てられた。小さいながらも、当時の建築家は新しいスタイルを導入している。たとえばエントランス・ホールに光が入りやすい構造にし、フレスコ画を見やすくした。この様式は50年後のウェッチーインのグービャウチー寺院が建設されるときに、より洗練されている。

 壁画のモティーフは説教的(didactic)と呼ばれるタイプで、ジャータカ(ブッダの前世物語)とブッダの生涯が主に描かれている。たとえば三十三天(ターヴァティムサ)からの降臨(写真左下)は有名である。

 特筆すべきは、この厖大なジャータカの画のなかに、国王を含む当時の人々の様子や服装が描かれていることである。現在の遺跡に、昔はどれだけの人がいて、どんな暮らしをしていたか、タイムスリップして確かめ、味わうのも悪くない。