バガン壁画礼賛 バガンで途方に暮れる 
<タッビンニュ寺院> Thatbyinnyu Paya  












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 荘厳さを競うのなら、バガンでタッビンニュ寺院の右に出る寺院はないだろう。その名タッビンニュ(ミャンマー語で全知全能の意。パーリ語でSabbannutanana)が示す通り、高さ201フィート(66m)はバガンの寺院のなかでも一番であり、他を圧倒する凄みがある。

 アラウンシードゥ王(在位11131163)によって建てられたこの寺院の建築様式は、しかし過渡期のスタイルとみなされている。二層式としてはもっとも古く、4つのポーチコ(柱廊式玄関)から成り立つレイアウトはアーナンダ寺院の原型といえる。アーナンダ寺院と違って4つのポーチコのひとつが突出している点は、スーラーマニ寺院やゴードーパリン寺院に受け継がれた。

 残念なことは、壁画がほとんど残っていないことだ。金が塗られた仏像に古さを感じる程度で、壁画は修復できるほどの顔料さえ剥げ落ちでしまったのだろうか。

何か重要なものが消えてしまった喪失感のようなものを感じながら回廊を歩くと、光が差し込んでくる鉄柵の窓の向こう側には、小石に絵を描いて売る即売みやげもの屋アーティストたちを見かけた。ミャンマーのみやげ売りといえば、そのしつこさで悪名高いが、彼らは例外的に観光客には目もくれず描きつづけていた。好感度はアップしたが、私は何も買わなかった。

 火炎とマカラ 

 寺院を去るときにあらためて玄関の上部を見ると、その二重の火炎式のペディメントが見事だった。火炎の先にはマカラが彫られていた。マカラは彫刻においても壁画においても、バガンでもっとも好まれるモティーフである。

 建物の側面にまわって寺院の頂上を見ると、金色のヴィマナが太陽光を反射し、輝いていた。ファインダーをのぞいてそこだけ見ると、先にティ(傘)がついた釣鐘型ストゥーパのようだった。