セックスシンボルが端役で出ていた 

 60年代、70年代のアイコン、ラクエル・ウェルチ(1940-2023)がじつはシーズン1エピソード8「浮気はパリで(Witch or wife)」でスチュワーデス役で出ている。飛行機に乗っているダーリンが窓の外にいるサマンサを見て驚き、騒ぎ立てたときにラクエル扮する客室乗務員が駆けつける。あらためて見ると、彼女の顔はほとんど映っていない。文字通り端役なのだ。この二年後には『ミクロの決死圏』『恐竜100万年』に出演し、ブレークし、いっきにセックスシンボルとなった。初代肉食系美女といった感じのグラマラスな女優だった。「奥様は魔女」には無名のセクシー美女がたくさん端役で登場する。ブレークするかどうかは、ほんのわずかな違いなのだろう。

 シャム猫がエキゾチックな美女に変身するエピソードの美女が気になる人もいるだろう[シーズン1エピソード21「猫じゃ、猫じゃ(Ling, Ling)」]。彼女の名はグレタ・チ(チ・クーピン)。父親は中国人外交官で、母親はドイツ人、デンマーク生まれのアメリカ人。女優業を引退したあと、スイスでレストランを経営しながら暮らしているという。

 じつはシーズン8エピソード12「八年目の浮気?(The Eight Year Itch Witch)にもシャム猫美女が登場する[itchはかゆみを意味するが、性的にうずうずする気持ちのこともいう。イッチとウィッチで語呂を合わせた]。トムキャット・トラクター社(あきらかにキャタピラー社をもじった名前)のモデルに応募してきたのがオフィーリアという名の美女(エンドラがダーリンに浮気させるために送り込んだシャム猫)だった。正直、グレタ・チのほうがシャム猫のイメージにあっているように思うが(オフィーリア役のジュリー・ニューマーは雌チーターか雌ライオンって感じ)、ジュリー・ニューマーはテレビドラマ版「バットマン」のキャットウーマンを演じる女優だったのだ。このキャットウーマンはゴージャスで、セクシー。当時のアメリカ人視聴者は彼女が誰であるか、そしてスペシャルゲストであることを知っていた。