(6)聖者の講話 

 人々が集まり、群衆はふくれあがった。彼らは永遠につづく輪廻転生から救済されたいと願う人々だった。目当ては、有名な聖者、スワミ・シヴァナンダだった。彼は群衆の前で女神ガンガーの物語を語っていた。

 ガンガーはいつもここにいたわけではありません。彼女はカイラーサ山に住んでいました。彼女はひとえに神々を喜ばすために流れていました。バギラタ王のために流れることがなかったなら、いまでも天上を流れていたことでしょう。しかし王は神々に慈悲と浄化を願い出ました。それは自分自身のためではなく、彼の祖父の6万人の息子たちのためでした。彼らは、一度は世界を征服し、略奪をほしいままにしました。下界でも同様のことをしようとしたのですが、隠者のカピラによってにらまれ、それによってみな灰と化してしまったのです。こうして何千何万もの魂が贖罪されないままになったのです。バギラタ王はガンガーの水だけが6万の魂を浄化し、解放できることを知っていました。彼は懸命に憐みを乞いました。その願いがかなったのは、シヴァの聖なる妃であるパルヴァティーに懇願してからのことでした。シヴァは逆巻く流れを自分の髪の間から流しました。それは何百万もの激流となって地上に落ちていきました。6万の失われた魂は女神ガンガーの水によって蘇ることができたのです。

 人だかりもまたイェシュアの興味の対象だった。

「ぼくは人も研究しているんだ。彼らが何を欲しているのか、彼らがどんなふるまいをしているか、といったことをね。どのように人に接するか、学ばなければならない。だから彼らのなかにいる必要があるんだ。彼らの身体、そこから発散されるオーラのようなものに触れなければならないんだ」

「どんな人を調べるというんだい?」

「身体に触れるというのは、魂をまさぐるということなんだよ。彼らのアートマだ。ぼくらイスラエル人のアートマときみたちのアートマはすこし違うかもしれない。きみたちの言うアートマは、ぼくらの国ではエルと呼ばれる。ヤハウェの人格化といっていい。動物の魂はネフェシュと呼ばれる。これらはすこしだけ異なるのだ」

 


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