スモーキーゴッド(霞みたる神) 

 地球空洞説をもとにした小説、ウィリス・ジョージ・エマーソン作『スモーキーゴッド(霞みたる神)』が1908年に出版された。のちにレイ・パーマーが特別なあとがきをつけて、この地球空洞ものの古典の再版を出版している。

 『スモーキーゴッド(霞みたる神)』はノルウェイの漁民イェンス・ヤンセンと息子オラフが1829年に地球の空洞に入るという(真実とされる)話をもとにした小説である。この本によると、イェンスと当時19歳だったオラフは1829年4月3日、スループ船に乗り、ロフォデン諸島に向けてストックホルムを出港した。

 最終目的は、象牙質の牙(セイウチの牙)をとって、フランツ・ジョセフ島の西岸を通って戻ってくることだった。島の沿岸の航行を続行するために、かれらはスピッツベルゲンで補給物資を調達しなければならなかった。かれらはスピッツベルゲンの沿岸のどこかに岩だらけの小さな入り江を発見した。驚くべきことに、そこには2エーカーほどの緑色の植物が生えた地域があり、気候も暖かかった。氷河や氷山に連なる土地とは思えなかった。

 かれらはフランツ・ジョセフ島めざして北極海を横切っていったが、嵐によってコースをはずれていき、はるか北のほうへと流された。奇妙なほど暖かい風を受け、巨大な氷山に遭遇し、雪嵐に視界を遮られながら、北極の地域へと突き抜けていった。食料は底をつき、羅針盤は用をなさなくなった。

 それから何日も過ぎたある日の午後、空を見上げると、水平線の上に太陽があった。しかし奇妙な太陽だった。それは霞みがかり、かまどのような色をしていて、ときおり雲や霧によって姿が隠れた。数日後、陸地は一変した――熱帯の植生に覆われていたのだ。かれらは新しい食べ物を得て、生き延びることができた。そして幸運なことに、羅針盤も正常に戻った。そのあとかれらは川を内陸のほうへ運ばれた。

 何日かのち、船と遭遇し、彼らはショックを受けた。それは巨大な人々が乗る巨大な船だった。この船はクルーズ船で、数百人の乗客を運んでいた。女性は9から11フィート(約3メートル)もあり、男性はさらに1フィート(30センチ)ほど高かった。

 イェンスとオラフはこの巨人族と仲良くなり、かれらの言葉を教えてもらった。チュニックのような外衣を着た男たちはまたとても音楽的だった。コミュニケーションは空気の流れによっておこなわれた。それはブルワー=リットンの1871年の小説『来るべき種族』に描かれるヴリル・パワーとどこか似ていた。

 地球内部の男女の寿命は、聖書の家長のように600歳から900歳だった。かれらは太陽崇拝者であり、内なる太陽、すなわち霞みたる神をほめたたえた。黄金はふんだんにあり、ほとんどすべてを覆いつくしていた。巨大な樹木は800フィートから1000フィート(24メートルから30メートル)、その直径は100フィート(3メートル)もあり、広大な森林はそうした巨樹から成り立っていた。家畜や象もまた巨大で、農作物もありあまるほどあり、植生はバリエーションに富んでいた。

 二年後、ノルウェイの漁師たちはこの地球内部のエデンから地球の表面に戻りたくなった。しかしながら北極の穴は氷河によって閉ざされていた。そこでかれらは南極の穴をめざして航海に出たのだった。

 しばらくのち、かれらは南極の穴に達し、大きな氷河をまわってなんとか大西洋に出ることができた。しかし待ち受けていたのは災難だった。かれらの船は二つの氷河にはさまれて打ち砕かれ、年老いたヤンセンは死んでしまった。すべての航海記録は失われ、難破した船から持ち出したものがいくらかあったものの、ほとんど身一つでオラフは氷山の上で生き延びたのである。

 驚くべきことに彼はスコットランドのダンディーから来た捕鯨船アーリントン号によって救助される。オラフは凍えるような氷山から救出され、食べ物とあたたかい飲み物を与えられた。そして船長のアンガス・マクファーソンにこの信じがたい冒険譚を語ったのである。

 エマーソンが言うには、船長はこの体験談は信じられないとにべもなく語ったという。オラフはそのため船長や船員に二度とこの話をしなかった。家に帰ると、オラフの母親はすでに死去し、市の役人は彼の話をまったく信じようとしなかった。好意をもっていない親戚にいたっては、彼を精神病院に送ったのである。28年後、退院した彼はアメリカに移住することが認められる。そこでウィリス・ジョージ・エマーソンと出会い、彼の冒険譚はようやく出版された。

 スモーキーゴッド(霞みたる神)のような本はあきらかにフィクションである。世紀の変わり目には、「本当の話」として、チベットや遠い島、あるいはどこかはるかに遠い場所への探検といったSF小説やファンタジー小説がたくさん生まれた。ターザンで知られるエドガー・ライス・バロウズもそのひとりで、ペルシダー・シリーズに地球空洞説を利用している。アメリカの作家エイブラハム・メリットも、ヒーロー・ドクター・ゴドウィンの本当の「科学的レポート」という名目で、『ムーン・プール』(1918)にはポンペイのミクロネシア島の地下の洞窟世界の冒険について、また『メタル・モンスター』(1919)にはチベットの失われた谷の地下都市の冒険について書いている。

 こうした本がレイ・パーマーとリチャード・シェイヴァ―に影響を与えたのは疑いない。1934年にはガイ・ウォレン・バラードがゴドフリー・レイ・キングのペンネームで『姿を現したミステリー(明かされた秘密)』を書いている。彼はこの本のなかで、シャスタ山やその近辺にある古代のハイテク秘密都市を幽体離脱で旅行する物語を書いている。バラードは科学的驚異を織り交ぜながら、アストラル体で訪ねる内世界を美しく描写している。(シェイヴァ―とパーマーが登場するまで、内世界に住むのはきまって高度な霊的能力を持った種族であり、アメージング・ストーリーズのような後退したデロのような種族ではなかった)これらの地下都市へ行っているあいだ、しばしば異星人と会ったとバラードは述べている。