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古代の道士はさまざまな駆夢法を考え出すだけでなく、悪夢の原因も系統的な解釈をしようとした。『雲笈七籖(うんきゅうしちせん)』巻四十五に引く『太丹隠書』に言う、「もしいくつか悪夢を見たなら、(その原因は)一にいわく魄妖(祆)[古代人は夢を魂魄の活動とみなした]、二にいわく、心試、三にいわく、尸賊である」。
悪夢を除く方法は、夢から醒めたら左手で人中(鼻と上唇の間のくぼみ)を二七(十四)回ひねり、二十七度叩歯し、そののち小声で呪文を唱える。
大洞真玄長練三魂、第一魂速守七魄、第二魂速守泥丸(脳)、第三魂受心節度、速啓太素三元君、向遇不祥之夢、是七魄遊尸来協邪源。
急召桃康護命、上告帝君、五老、九真、各守体門。
黄闕神師、紫戸将軍、把鉞握鈴、消滅悪精、返凶成吉、生死無縁。
呪文を唱え終えてふたたび眠ることができれば、よい兆しを得たといえるだろう。これを三年修練すれば、ふたたび悪夢を見ることはないだろう。
『雲笈七籖』巻四十六に「厭悪夢神呪」「太帝制魂伐尸神呪」「太帝辟夢神呪」が収録されている。呪文はそれぞれ異なるがきわめてシンプルで、手法はほぼ同じである。さしあたって二つの呪法を例として挙げよう。
「厭悪夢呪」に言う、悪夢を見るたびに、北に向かい、太上大道君に稟告(ひんこく)する。細かく説くこと四五遍以下、すなわち悪夢は消滅する。また引用した「青童君口訣」に言う、夜、悪夢を見る。目を覚まし、枕を返し、呪文を唱える。
太霊玉女、侍真衛魂。
六宮金童、来守生門。
化悪返善、上書三元。
使我長生、乗景駕雲。
呪文を唱え終わると、唾を七度飲み込み、叩歯七度、これを四五遍繰り返す。すなわち悪夢を返し、さらに吉祥が得られる。
「太帝制魂伐尸神呪」に言う、毎月の最初の日、そして最後の日、あるいは甲寅、庚寅、庚申の日、体内の「七魄遊尸」[遊尸はキョンシーの一種]と諸種の「血尸之鬼」は走って天上に至り、人は罪を犯したと説く。下界にやってきたあと、あるいは独自に深く人体に入って害をなす。あるいはほかの村にぶらぶらと出かける。そして外部の鬼を招集し、いっしょに暴虐にふるまい、人に悪夢を見させ、神経を不安定にさせる。
「人は悪夢のために疾病にかかる。七魄遊尸のせいである」。
これにより七魄遊尸猖獗の日がやってくるたび、沐浴して着替え、香を焚いて沈思黙考し、雑務に煩わされないようにする。当日の黄昏、あるいは夜半、臥せて寝る。頭は東方に向き、手を胸の上で組み、まず叩歯三十七回、そのあとかすかな声で呪文を唱える。
七霊八神、八願四陳、上告霊命、中皇双真。
録魂煉魄、塞滅邪精、血鬼遊尸、穢滞長泯、利我生関、閉我死門。
若有真命、聴対帝前、使我長生、劫齢長存。
太帝之法、敢告三元。
呪文を唱え終わると、叩歯三十七回、唾液を十回飲み、呪法は完結する。作者によると、つねにこの呪文を唱えると、「悪を避け、病を除き、人に神が不死であることを知らしめる」。そして「一生魘昧(えんまい)の被害を蒙ることはない」。[魘昧とは、法術を使って人に禍を与えること。ブラックマジック]