親睦四瑞

 チベットでは、この吉祥図案は民家や寺院の壁、扉、茶碗などあらゆるところに描かれているので、目にする機会が非常に多い。象、猿、野ウサギ、ウズラが力を合わせて樹上の果実を取るというモティーフである。

 この四種の動物は、象徴的だ。ウズラは空、猿は木、象は地上、野ウサギは地下を表している。世界の四層というわけである。

 じつは話のもとはジャータカ(本生譚)のなかのティッティラ(ウズラ)・ジャータカにあった。はじめ登場する動物は、ウズラ、猿、象の三種だけだった。

 ブッダは言った。

<ヒマラヤの山麓に巨大なバニヤンの木があり、その下に三人の友人、すなわちウズラ、猿、象が住んでいた。彼らはだれがもっとも古くから住んでいるか、論じ始めた。

象が言った。「ぼくが赤ん坊のとき、バニヤンの木はまだ低木だったよ」

 猿は言う。「おれが幼いとき、バニヤンの木はまだ芽だったよ」

 ウズラは言った。「わたしはバニヤンの木の種を飲み込んだことがあります。わたしの落とした糞から芽が出たのですよ」

 これでウズラが最年長であることがわかったのだ。ついで猿、象の順である。このとき以降、動物たちの世界はまた平穏を取り戻したのだ>

 ブッダはサンガにもこのような平穏が必要と考えていた。ブッダの考えでは、象は目連(Maudgalyaayana)であり、猿は舎利弗(Shariputra)、そしてウズラはブッダ自身だった。野ウサギはあとで加わり、阿難(Ananda)と考えられた。歳の順では、ブッダ(ウズラ)のつぎだった。