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　ケサルが修行室でひとりくつろいでいると、法螺貝の色をした（天界の）姉妹の女神マネネが銀の虹橋に沿ってやってきて、やさしい口調で語りかけた。

 

あなたの心は何ものにも妨げられず、占められることもありません　

広々とした空の揺るがない行路なのです　

愛する兄弟よ、獅子のごとき人の友よ　

あなたは宇宙の中心で輝く太陽です　

あなたの王国は慈愛の光をたっぷりと浴びています　

ここに暮らすということはどんなに素晴らしいことでしょう　

けれども親愛なる兄弟よ、リン国の境界の向こう側には　

さまざまな虚妄によって人間の美徳が曇らされた領域が存在します　

ああ、兄弟よ、あなたはこれら暗黒の領域へ行かねばなりません　

太陽さえもが暗黒の嵐を通過することができず　

燃えはててしまうのです　

あなたの国の人々がどんなに幸せに暮らしたとしても　

暗黒勢力はつねに恐怖との境界で生きているのです　

もしあなたの王国の健全さに限界がないなら　

最初に有神論の砦（とりで）を　

すなわちティルティカ（外道）の領域、暗黒神と血の犠牲の領域を　

破壊しなければなりません　

善性の強さは神の力と信じる人々は　

彼ら自身に内在する強さを盗まれています　

彼らの尊厳も盗まれ　

他者の手に自身がゆだねられているのです　

僧侶は尊い薬を蓄え　

ブッダの言葉のコレクションを書棚にそろえます　

しかしこうして貯め込んだものによって　

人生に安易さと逃避をもたらしているのです　

あなたはそこへ行って

ティルティカ（外道）の砦を破壊しなければなりません　

そして神を神自身の領域に戻し　

その信者を奴隷の状態から解き放つのです　

あなたは最高位の僧侶であるルンジャク・ナグポを殺さなければなりません　

そしてその娘を解き放ちなさい　

彼女は慈悲の秘密の化身なのです　

それから教えと薬をリンに持ち帰りなさい　

このことが将来の妖魔征服の保証となるでしょう　

 

　ケサルはマネネの言葉を聞いて、網にかかった小鳥のように心臓が高鳴った。これから入ろうとしている苦悩の世界の残酷さを知っているかのように、彼は姉妹にほほえみを返した。マネネは銀の虹に沿って天空に姿を消した。