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ケサルは奇跡の馬、キャンゴ・カルカルを呼び、うっそうとした深い森の中央へともに飛んでいった。森の中にはとてつもなく大きな白檀の木があった。その木の中に、大きな都市の城壁より長い手ごわい黒蛇が住んでいた。
この蛇はルンジャク・ナクポの生きている秘密の核心であり、脅し、悪意のある強欲、恐怖の化身だった。
ケサルがこの蛇を呼ぶと、それは身体をくねらせ、シュッ、シュッという音を発し、墓所の腐敗の臭いを漂わせながらやってきた。
トグロを巻いた蛇は、太陽を隠そうとするかのように頭を高くかかげた。ケサルはその頭めがけて弓を射た。矢は蛇の額に命中し、蛇は地面に叩きつけられた。
ケサルは輝く角を切り、瞳が鉄でできた眼球をえぐり取り、その燃える心臓を切って取り出した。
それからケサルと愛馬は下方へ飛翔し、地上よりはるかに下の巨大な暗い洞窟に着いた。そこには手ごわい青銅の亀が住んでいた。それは弟子たちの希望と恐怖がもたらした、隠された、また維持されたパワーの化身だった。彼は隕石の鉄でできたプルバを放り投げ、その目と目の間に命中させ、妖怪の金属製の頭蓋骨を粉砕した。青銅の体は、洞窟自体が崩壊したため、押しつぶされた。唯一残ったのは、亀の脳みその真ん中にあった光る宝石だった。
勝ち誇ったケサルは、キャンゴ・カルカルに乗って虹の光の渦の中を飛んで、天空の頂に到達した。ケサルが剣を掲げると、光を反射して、剣の刃は昼間の星のようにきらめいた。彼は高らかに歌った。
リクデンの父たちよ、先祖の王たちよ
サキョンの王統よ
世界に唯一の輝く太陽よ
あなたは叡智であり、理解であり、滋養であり、大地の慰めである
わが存在の原子は、あなたの確信以外のなにものでもない
シャンバラのクリカの王たちよ
あなたがた、尊厳の頂よ
あなたがたの途方もなく大きな至高の心の一瞬の時に
私は目覚めの王国を建設する
目覚めることは、人間界に生きるすべての者の生得権である
キ・キ・ソ・ソ