5 

夜が落ち、輝く満月が明瞭な黒い空に昇った。その光によってまわりの世界は明るくなったが、それでもなお神秘的で心に訴えるものがあった。愛馬キャンゴ・カルカルが扉の横に静かに立っていた。ほかの人たちは洞窟の中央に輪になって坐っていた。ケサルの重々しいが、すっきりとした声が響いた。

 

われわれの事業は完成した。 

これらの身体を永続させる必要もないだろう。 

確信と覚醒の真実は、存在の見せかけに拠っているのではない。 

そして非存在の幻覚に脅されているわけではない。 

よく言われるように身体は貸し出されている物体である。 

そしていまその成分がその本性に戻される時が来た。 

土をこの世界の山と平原に戻そう。 

水を川、湖、海に戻そう。 

熱をかまどの炎やキャンプの火に戻そう。 

風を空の大気に戻そう。 

赤と白の元素を 

太陽と月の祝福として

アヴァドゥーティ(神秘)の純粋な空に戻そう。 

このようにわれわれの存在は 

愛において偏らず 

輝きにいて曲げず 

この世界に住むすべての人を 

祝福し、導き、守る。 

この誓いによって 

ケサルと心の仲間たちは 

夜の間中、じっと座る。 

暁の最初の光線が光の矢のごとく遠い山なみに射したとき 

確信の大きな吼え声で 

彼らは戦士の言葉を発した。 

白い山の正面の洞窟内には 

からっぽの衣服とわずかな虹の痕跡だけが残った。 

夜が完全にあけると、 

リンの王国には大きな虹が架かっていた。 

このあざやかな虹の上には、太陽と月が同時に輝いていた。 

星々もまた風の吹く暁のピンク色の空にきらめいていた。 

三日間、空はそのまま動かなかった。