『テンジュン(bsTan-'byung ボン教教法史)』という書物には、ボン教の伝播についてこれとは多少異なる記述が見られる。私はこのボン教文献に含まれる興味深い数々の記述について、F. W. トーマス教授の教示を仰いだ。それによれば、シェンラブあるいはムチョによって、天界のボン教徒たちがインド、中国、ウディヤーナ、東トルキスタン、そしてチベットへと派遣されたとされている。インドへ派遣された教師たちは釈迦族の系譜に転生したと伝えられているが、これはもちろん、仏教がボン教に依存していたとする説を裏付けようとする試みにほかならない。
これらの師の名は、『セルミク』に記載されている名とは一致しない。しかし、彼らが「ムチョ(Mu-cho)」、あるいは「教えを集成したムチョ、カドゥムチョ(bka bsdu mu
cho)」と呼ばれている点は興味深い。シェンラブの代理人である「ムチョ・デムドゥク(Mu-cho
ldem-drug)」の名に見られる「ムチョ」という語は、このように「師」を意味する呼称であり、それがマニ教の用語「モザグ(Mozag)」に由来する可能性も否定できない。