フードゥー呪術の実践
イントロダクション
呪術師のある一日
ジョージア州の涼しい秋の日、木々の葉は緑からオレンジや金色に、あるいは茶色に移り変わろうとしていた。木々も、取り囲む景色も言葉にできないほど美しかった。心地よいそよ風が地面に落ちた葉を揺らしていた。
夕刻が近づくにしたがい、太陽は店じまいをはじめ、夜に後を託すことになった。光は闇に変容していった。それは精霊が起きる時間帯でもある。昼は生者のために、夜は死者のためにある、言うまでもなく。太陽が消え去ったあと、黒いズボンをはき、赤いシャツを着た男は地元の教会の隣にある墓地に近づいた。男は左手に葉巻を、右手にウイスキーのボトルを持ち、頭には濃紺色(ネイビーブルー)の布を被っていた。
彼こそは呪術師(コンジュアマン)、すなわちフードゥー呪術師である。呪術(コンジュア)とフードゥーは同義語であり、どちらを使用してもかまわない。
彼は墓地の入り口まで歩いていき、ゲートを見つけた。ポケットをまさぐり、数枚のコインを取り出した。コインを持ったまま、四方、すなわち東、西、北、南に短い祈りの言葉を唱えた。火のついた葉巻とウイスキーのボトルを持ったまま、ゲートから中に入り、墓地の中の十字路まで行った。そこに着いてから彼の呪術は始まる。
彼はジャケットの後ろポケットから小さいスコップを取り出し、十字路に小さな穴を掘った。地面は少し硬かったので、掘る作業はやっかいだった。穴は25センチの深さで直径は20センチほどだった。10分ほど作業を進めて穴は完成した。
男はこれから行うことに関して先祖と大地に感謝の言葉を述べた。それからいくつかのコイン、すなわちクオーター(25セント貨)、ダイム(10セント白銅貨)、ニッケル(5セント白銅貨)、ペニー(1ペニー貨)を取り出し、ふたたび四つの方角に向かって祈りの言葉を述べた。そしてコインを穴に放り入れた。彼はウイスキーを穴の底のコインの山の上にそそぐと、呪術がうまくいくようにと、大地と同様、墓地の精霊たちに捧げもの[ウイスキー]をした。
捧げものが地面にそそがれると、男は後ろポケットから茶色の紙バッグを取り出した。このバッグにはいくつかのアイテムが入っていた。
セパレーション・オイル(別れるためのオイル。魔女オイル)として知られる特殊なオイルに浸したより糸をぐるぐる巻きにした若い男の写真もその一つである。男はまたバッグから根と魔除け、そしてホット・フート・パウダー[人を遠ざけるためのパウダー。ハーブとミネラルを混ぜたもの]を取り出した[調合法は後述]。
すべてが入ったバッグを穴の中に置く。彼は墓場の精霊を呼び出し、特別な関係を築き、写真の若者に別れをもたらすよう頼んだ。呪術師は写真の男が関係を断ち切り、離れることができるよう依頼したのである。祈りの言葉と宣言が発せられると、呪術師は穴を埋め、ウイスキーを上からそそいだ。
男は立ち上がり、スコップを後ろポケットにしまった。彼は手伝いをしてくれた、宣言を聴いてくれた墓地の精霊に感謝の意を示した。墓地の門まで歩いて戻り、門の精霊に感謝の意を示し、それから家に戻った。
その日早く、男は若い女性の訪問を受けていた。彼女はしばらく男のところにいた。彼女はボーイフレンドに感じる恐怖と深い悲しみについて語った。ボーイフレンドは乱暴で、支配欲が強く、酒を飲むと怒りまくった。彼女をどこにも行かせないと言うときの彼は恐怖そのものだった。実際、どこへも行けなかった。女性は泣き叫び、混乱していた。
呪術師は相談に乗り、彼らはしばらく話し合った。若い女は彼が根の呪術師であることを知っていた。彼女の現状を変えるために呪術のエレメントを使うことができることを知っていた。彼女の人生から暴力的なボーイフレンドを引きはがすよう依頼したのである。