印度魔物学大全(1)
[ア行]
アーディ(Aadi)
シヴァに殺されたアンダカ(Andhaka)の息子。アーディはその復讐の機会を待っていた。アーディは自在に変身することができたが、そのパワーを使ったときには殺されることになった。アーディは蛇に変身してシヴァの牛ナンディの下を通り過ぎ、それからシヴァの妻パルヴァティに変身してシヴァに近づいた。シヴァはそのときパルヴァティと口喧嘩をしたばかりだったので、あやしんで身体の徴を探した。徴がなかったので、この魔物を殺した。(シヴァ・プラーナ)
アヴィンディヤ(Avindhya)
シータを殺さないようにラヴァナに忠告したよいラクシャサ。
アガー(Aghaa)
カムサ(マトゥラの魔王)の家臣(将軍)でプタナやバカの兄弟。巨大な蛇の形を取る。洞窟と間違えてクリシュナの牧童の仲間たちはその口の中に入ってしまう。クリシュナは彼らを救出し、この魔物を殺した。(バガヴァタ・プラーナ、ハリヴァムシャ)
アカムパナ(Akampana)
ラーマーヤナの戦争でハヌマンに殺されたラヴァナ(ランカ島の魔王)の将軍。ラーマの無敵の強さを知っていたので、ラヴァナにラーマの妻シータを堂々と誘拐するよりも、ひそかに連れ去るよう進言した。(ラーマーヤナ)
アクシャ(Aksha)
ラヴァナ(ランカ島の魔王)の長男。ハヌマンがランカをラーマの使者として訪ねたとき、彼を殺すべくラヴァナから送られたラクシャサのひとり。彼は弓の一斉射撃で攻めたが、ハヌマンはその足を捉え、空中に投げ飛ばし、地面に叩きつけて殺した。(ラーマーヤナ)
アグニシュヴァッタ(Agnishvatta)
マリチャの子孫。また家の火や犠牲の供えの習慣を守らなかった先祖の魂。(ヴィシュヌ・プラーナ)
アクリ(Akuli)
1)キラータ(Kilaata)とともにマヌに対し特別な影響力を持つアスラの祭司。(シャタパタ・ブラフマナ)
2)悪魔の精霊。(ハリヴァムシャ)
アサマンジャス(Asamanjas)
アヨーディヤ王サガラとヴィダルヴァの王女ケーシニの間にできた息子。彼は野放図で不道徳な若者だった。のち法螺貝の形を取って海に住み、パンチャジャナと呼ばれたが、その姿のときクリシュナに殺された。(ハリヴァムシャ)
アシラス(Ashiras)
頭のない霊魂や悪魔。
アシュヴァパティ(Ashvapati)
西パンジャブ地方のカイケーヤに住むのはアスラ。(マハーバーラタ)
アスラ(Asura)
堕ちた神々。
アティカヤ(Atikaya)
ラヴァナのどでかい息子。ブラフマーに祝福された。最後にはブラフマーの兵器(ブラフマストラ)でラクシュマナ(Lakshmana)に殺された。
アナリヤ(Anarya)
下劣で卑しい行為を指すことばだったが、次第に非アーリア人、ついで魔物を指すようになった。
アヌフラダ(Anuhlada)
ヒラニアカシプ(Hiranyakashipu)の息子。インドラの妻シャチ(Shachi)を誘惑した。(マハーバーラタ)
アパスマーラプルシャ(Apasmarapurusha)
幼児の体を持った無知の悪魔。ナタラジャの左足で踏みつぶされる。ナタラジャはシヴァの一形態で、宇宙の創造、持続、破壊のプロセスを動作に表したダンスで象徴される。アパスマーラは忘却を意味し、バランスや意識に関して無知であることを象徴する。
アヒ(Ahi)
旱魃の悪魔、ヴリトラの別名。アヒは蛇の形態を取る。アヒは雲の陣形ないしは水蒸気の意味。リグ・ヴェーダでは、雷と雨の神であるインドラとつねに争っている。リグ・ヴェーダの宗教は汎神論的で、さまざまな自然の力が擬人化されている。
アビマナ(Abhimana)
ガネーシャによって、ドゥムラヴァルナ(Dhumravarna)として制圧された、身勝手なプライドの悪魔。(ムドガラ・プラーナ Mudgala Purana)
アヨームキ(Ayomukhi)
シータを護衛するラヴァナ(Ravana)の代理のラクシャシ(Rakshasa)。ラヴァナと結婚するようシータを説得する。(ラーマーヤナ)
アラカディパ(Alakhadipa)
ラクシャサの四つの氏族のひとつ、ナイッリタ(Nairrita)の王。(Bhagavata Purana Brahmanda Purana)
アラムブシャ(Alambusha)
リシャシュリンガ(Rishyashringa)のラクシャサの息子。マハーバーラタ戦争ではカウラヴァ族(Kauravas)を応援し、サティヤキと戦うが、負けてしまう。最後にガトートカチャ(Ghatotkacha)に殺される。
アラユダ(Alayudha)
バカ(Baka)の兄弟。マハーバーラタではガトートカチャに殺される。
アラルカ(Alarka)
アスラのダムシャ(Damsha)の別名。赤のラクシャサ。
アリシュタ(Arishta)
バリ(Bali)の息子でカムサ(Kamsa)の召使。野生牛の悪魔。ヴリンダヴァン(Vrindavan)のまわりの丘や山を切り裂き、牛飼いを恐がらせる。最後にはクリシュナに殺される。(Harivamsha, Bhagavata Purana)
アルブダ(Arbuda)
1)リグ・ヴェーダの大気の悪魔。2)ギリヴラジャ(Girivraja)に住む蛇の悪魔で、インドラに殺される。ラジャスタンのアブー山とそのあたりに住む人々はアルブダにならって名づけられた。(マハーバーラタ)リグ・ヴェーダではパワフルなダシュー(Dasyu)として描かれる。インドラに殺される。
アンジャカ(Anjaka)
ヴィプラチッティ(Viprachitti)の息子。
アンダカ(Andhaka)
盲目の闇、の意味。シヴァとパルヴァティの息子。パルヴァティがふざけて後ろからシヴァの目を覆ったときに懐妊した。世界は闇に包まれ、シヴァの第三の目が怒りで開いた。シヴァとパルヴァティの心と汗から、暗く、髪もぼさぼさの悪魔のアンダカが、踊り、歩きながら現れた。パルヴァティに拒絶されたため、子供のいない魔女ヒラニャネートラ(Hiranyanetra)によってマンダラ山で育てられる。
アンダカは厳しい修行に耐え、おのれの肉体を切り刻み、それらを犠牲の火に放り込んだ。アンダカは最後に母のパルヴァティを欲し、シヴァに化けた。が、パルヴァティはアルカ(Arka)の花に隠れた。シヴァは怒り、タンダヴァ(tandava)の踊りを踊って悪魔を滅ぼす準備をする。シヴァは三叉矛でアンダカを突き刺し、高く掲げ、第三の目で焼き尽くした。
別の伝承では、アンダカはカシャパとディティ(Diti)の息子である。アンダカは千の腕と頭、二千の目と足を持つ。天界からパーリジャータ(Parijata)の木を盗もうとしてシヴァに殺された。シヴァはアンダカのサムハーラ(破壊者 Samhara)あるいはリプ(敵 ripu)として知られるようになった。(Kurma Purana)
イシュティパシャス(Ishtipashas)
供え物を盗む者、の意味。供え物を尊重せず、犠牲の儀式の間に盗もうとするアンチ・ヴェーダの悪魔。
イルヴァラ(Ilvala)
1)ダンダカ(Dandaka)の森に生きるラクシャサ。シミカ(Simhika)とヴィプラチッティ(Viprachitti)の子供で、ヴァタピ(Vatapi)ナムチ(Namuchi)マリチャ(Maricha)の兄弟。イルヴァラと兄弟は楽しみながらバラモンを殺そうとするが、兄弟のひとりが聖者アガスティヤ(Agastya)に食べられてしまう。ヴァタピは子羊に化け、いけにえとして捧げられ、バラモンに食べられる。イルヴァラが彼を呼ぶと、ヴァタピは内臓を破って外に出てきた。同じことをアガスティヤに試みるが、内臓を破って外に出ることはなかった。イルヴァはアガスティヤを攻撃するが、聖者の目から放たれた火によって焼き尽くされてしまう。
2)フラダ(Hrada)とダマニ(Dhamani)の息子。イルヴァはアガスティヤのためにヴァタピを調理する。彼はヴリトラの家来でありインドラと戦う。(Brahmanda Purana)
神と悪魔の戦争に参加し、ブラフマーの息子たちと戦う。バルバラ(Balvala)の父。(Bhagacata Purana)
インドラジット(Indrajit)
ラヴァナの息子で、メガナーダ(Meghanaada)すなわち雲の音として知られる。天界で父ラヴァナがインドラの軍隊を攻撃したとき、勇敢に戦った。メガナーダはまた神々の弱点につけこんで、あらゆる神々のパワーを引き出した。たとえばシヴァからは隠遁術を会得した。彼は透明人間になってインドラを捕え、ランカに運んだ。ブラフマー率いる神の軍隊がインドラを救出しようとするが、メガナーダは不死を要求する。ブラフマーは拒絶し、彼をインドラジット(インドラを征服する者)と名づけた。
このエピソードは雲が雨を放つという自然現象を表している。それゆえ黒くて目が赤いという外観で描写される。これは人間ではなく、ヤクシャの姿である。
インドラジットは呪術師である。彼はシータの幻影を作り出した。猿の軍隊の前でシータを殺し、猿の兵士たちの士気をくじく。ハヌマンはそれを見て戦争をやめようとする。しかしラーマはラヴァナとラクシャサがいるかぎり、戦わなければならないと考えた。そのときヴィビシャナ(Vibhishana)は、シータを欲していたラヴァナがシータを殺すはずがないと指摘する。ラクシュマナ(Lakshmana)とハヌマンはインドラジットの軍隊を攻め、矢、木、岩などをインドラジットに浴びせかけた。ハヌマンは風(ヴァユ)の息子なので、雲(メガナーダ)を追い散らすと宣言した。
ウグラシャ(Ugrasya)
マヒシャの軍隊のアスラだが、ドゥルガの弓によって殺される。
ウグラヴィラ(Ugravira)
マヒシャの軍隊のアスラだが、ドゥルガの矢によって殺される。
ウシャ(Usha)
ダイティヤ(Daitya)の王女。バリの息子であるバナ(Bana)の娘。
ウダグラ(Udagra)
マヒシャの軍隊のアスラだが、ドゥルガの石と木によって殺される。
ウッダタ(Uddhata)
マヒシャの軍隊のアスラだが、ドゥルガの矛によって殺される。
ウパシュンダ(Upashunda)
ニシュンダ(Nishunda)の息子で、スンダ(Sunda)の兄弟、ムカ(Muka)の父。ヒラニャカシプ(Hiranyakashipu)の家族に属する。(マハーバーラタ)
彼はナーガを制圧し、何人ものリシ(聖者)を殺した。しかし最後には、アプサラス(apsaras)のティローッタマ(Tilottama)によって殺される。
ウルナヴァバ(Urnavabha)
リグ・ヴェーダの旱魃の悪魔。別名ヴリトラ。