心風景 inner landscape 7    宮本神酒男



 昔、私は人によくこの写真を見せたものだ。
「ほら、見てごらん。鳥がいるでしょ? 鳥が居るから鳥居。日本の鳥居の源流だ」
 雲南省西双版納(シーサンパンナ。タイ族の言葉でシップソーンバーンナー)の森の中ではじめてアイニ族(ハニ族支系)の小鳥の木彫りがのった鳥居を見たとき、まるで日本文化の源流を発見したかのような気になった。このあたりは古代日本とのつながりを連想させるものが多いのも事実である。たとえば高床式家屋に千木、かつお木。これなどは神社の様式とおなじなのだ。鳥居も雰囲気が日本の鳥居に似ていて、しかも「鳥が居る」となれば、日本文化の源流だと思って小躍りするのも当然のことだろう。
 ところが実際はもちろんすべてが日本文化と共通しているわけではない。そもそもこれは鳥居ではなく、村の門である。鳥居というのは、そこから先が聖域であることを示している。その向こうに神社があるのがふつうだが、御神体である山そのものがあるかもしれない。一方、アイニ族の鳥居の先は村であり、人が生活する場所なのだ。
 木彫りも鳥だけでなく、たとえばブタの木彫りがのっていることもある。鳥がいるので鳥居なら、ブタがいるので豚居ということになってしまう。
 アイニ族の鳥居(村の門)は、ここで悪霊や魔物をとどめるという役目があるのだろう。だから写真にあるように「鬼の目」が掛けられているのだ。日本の鳥居も聖域に悪霊や魔物が侵入しないための結界であるなら、基本的な役目は同じと言えるかもしれないが。

 邪霊や魔物の侵入を防ぐ「鬼の目」 

 そして日本人が違和感を抱かざるをえないのが、鳥居の下に置かれた男女をあらわす枝木のまぐわいである。鳥居の役目ということを考えれば、これもまた悪霊や魔物を退散させるためのものだろう。まぐわいは、生命力を生み出す聖なる神のおこないなのだ。生み出されたエネルギーは、外部からやってくる悪霊や魔物を、つまり災難や病気をここで追い払ってくれるのだ。

 
男女の木のまぐわい。中央に男、右に前の男、女は手前。(左写真) 別の角度から見ると、女と男がまじわり、
前の男は手前に倒れている。まるで三角関係のよう。また鳥居の真下に結界を示すラインがあり、まぐわいの場所は
その上にあるのだ 


 近くのアク族(ハニ族支系)の高床式・千木・かつお木の家屋 


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