心風景 landscapes within 64 宮本神酒男
微笑みのブッダは永遠に (ミャンマー・インワ)
正直言って、ダメだったのではないかと思う。一縷の望みは捨てていないが、希望の光は見えてこない。
2025年3月28日、ミャンマー北部のザガイン、マンダレーを中心とする地域を襲った地震によって広域にわたって甚大な被害が出た。このインワの仏像もおそらく崩れてしまったのではないかと思う。
インワ(旧称アヴァ)というのは不思議な場所で、14世紀から19世紀にかけて都が置かれていたエリアだが、人はほとんど住んでおらず、廃墟と遺構と少しばかりの寺院や博物館などがあるだけで、生活臭というものがまったくない。観光客を除けば、みやげもの売りばかりが目立つ。私はチャーターした昭和のマツダのピックアップの荷台に坐って移動していたが、みやげもの売りたちがどこまでも追いかけてくるので、感心してしまった。おばちゃんたちは自転車にのっているので理解できるが、12歳ぐらいの女の子はひたすら走って追ってくるのである。その情熱にほだされて私はまたもおみやげを買いすぎることになってしまった。
微笑みのブッダに話を戻そう。パゴダの基部なのか、蔵なのかわからないが、狭い空間のなかで休んでいると、幼児二人が大股で歩きながらブッダの前にやってきた。あわてて撮った写真が上の画像である。拡大して見てほしい。本当にブッダは微笑んでいるのだ。たまたまそう見えるのだろうか。視線は幼児たちに注がれているし、口元はあきらかに微笑んでいる。奇跡の話ではなく、笑みを浮かべたブッダを作者は作ったのではなかろうか。
動画や画像を見る限り、インワの外部の仏像はすべて崩れてしまったように思える。ミャンマーに限らないが、崩れた仏像を元のように作っても、たいていは似ても似つかぬものができあがる。こういったものは立体的なデータを残し、立体コピーしたものを正確に再現(コピー)できるようにすべきである。今さらこんなことを言っても遅いが、ほかの地域の仏像やパゴダはデータ化を薦めるべきだろう。
インワのみやげもの売りのスタミナはけっして切れることがなく、いつまでも追いかけてきた。この女の子はお転婆娘で、子供らしくはしゃぎまわっていたけど、あとで写真を見るとおとなっぽい表情をしているのが一枚あった。