森林火災の恩恵 

すべての逆境……すべての心痛は同等の、あるいはより大きな利益の種をもたらす。

    ナポレオン・ヒル 

 

人の偉大さは腹だたしい状況に耐える能力によって決まる。

    プラブパーダ 『クリシュナ:至高の神格』 

 

 セコイアはもうひとつ、とても重要なことを教えてくれた。サンフランシスコ近郊のミューア・ウッズでは、20世紀前半のおよそ五十年間、セコイアの木々に新しい成長が見られなかった。ようやくわかったのは、森林管理官(パークレンジャー)らの仕事がまじめすぎるということだった。彼らの仕事は見事すぎて、いっさいの森林火災を防いでいた。しかしそのために、定期的に発生する火事がなくなり、セコイアが種子を送り出すために確保していたスペースを作ることができなかった。これは、たとえいい意図があっても、適切な知識がなければむしろ後退してしまうという目に見える例である。

 『山火事:間違った森林対策の一世紀』という火災環境学の本のなかで、著者ジョージ・ワースナーは、自然のなかのバランスの取れた活動がいかに必要か、またどのように役に立つかについて強調する。小さなオートミール・サイズのセコイアの種は、とても硬い、乾いた円錐状の球果体のなかに埋め込まれ、何かの介在がなければ外に出ることができなかった。つまり森林火災の熱で球果体がはじけ、種が噴出し、そのまま地上に落ちていった。火はやぶや低木を焼き払い、種は地面に達し、根を張った。種から芽が生えたとき、太陽光が強すぎると成長が阻害された。火災からできた灰が種を覆ったので、成長することができたのである。火災は土壌を必要な栄養分を持ったものに変えていた。

 ひとたび芽が成長し始めると、今度はふんだんな日光が必要となった。それもまた火に助けられた。火は太陽光をさえぎる植物や低木をすべて焼き払っていた。わたしたちの人生における逆境の火災もまた、成長を助けているということを、セコイアを通じてわたしたちは自然から学ぶのである。


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