何が重要か思い出すこと 

この人間という生命の形が、生きもの全体にとってもっとも価値あるものである。彼らは生命の謎を解くのにそれを活用する。

  プラブパーダ『バガヴァッド・ギーターあるがままの詩』 

 

 「貴重な時間」はヒンドゥー教の子供たちの物語で、多くのおとなたちにとってもお気に入りのもの。ナーラダにはカイラーシュという名の弟子がいた。ナーラダが彼に、時間が速く過ぎていくので、どうかもっと真剣に霊的生活のことを考えて、と言ったとき、カイラーシュは答えた。「ええ、そうしましょう。でもまず、自分の勉強を終えたいのです」。ナーラダは平穏なムードのまま彼のもとを去った。

 何年かのち、彼は戻ってきておなじ要求をした。カイラーシュは少し言い訳をするように言った。「ええ、おっしゃるとおりです。ぼくは霊的な成長に集中すべきです。でも結婚したばかりで、家族を支えるために商売を立ち上げなければならないのです」

 数年後にナーラダが戻ってきたとき、カイラーシュには育てている何人かの子供があり、何年かのちには何人かの孫がいた。「すべきことがもうひとつだけあります。それが終われば準備万端です」と彼は言い続けた。

 のちにナーラダが戻ってきたとき、カイラーシュの子供たちが、父親が死んだという知らせを持ってきた。自分の弟子を手助けするのに失敗したことにがっかりしながら、ナーラダが歩き去ろうとすると、一匹の犬が走ってきて、ほえた。「ナーラダ師匠、ぼくはカイラーシュです!」

 憐みの情を覚えながらナーラダは犬に言った。「遅すぎるということはないよ。おまえを助けてやろう。さあ、どうかもっと真剣に霊的生活のことを考えて」

「はい、そうします。でもぼくの子供たちや孫たちがぼくの土地をないがしろにしているでしょう? それを守るためにもう少しだけ時間が必要なのです」

 ナーラダはもう一回戻ってきたが、その犬は死んでいた。驚いたことに、草むらの蛇がシューシュー音を立てながら、弟子の声で話すのが聞こえた。「ぼくはカイラーシュです。どうかぼくに、真剣に霊的生活を送らせてください。あなたがぼくを助けるために来たことは知っています。でもすべきことがいくつかあるのです。家族の作物を泥棒や略奪者から守らなければならないのです。じつのところ、もうほとんど終えていますが」

 ナーラダは弟子を愛していた。しかし愛はときにたしかな行為を要求する。彼は弟子の家の玄関まで歩いていき、カイラーシュの年を取った子供たちに、庭に毒蛇がいなすよ、と教えた。男たちは棒を持って庭に出て、父親を叩き始めた。

 カイラーシュは嘆き叫んだ。「ナーラダ師匠、真剣に霊的生活を送りますよ! 準備は万端です。だから助けて!」

 時間と潮の満ち引きは人を待たないと言われる。どれだけわたしたちはぐずぐずと引き伸ばすのだろうか。わたしたちが持っているものすべては、「ここ」と「いま」だけである。あなたが終えたかどうかなんて、死は気にしていない。あなたの時間がタイムアップのとき、あなたは動きをとめることはできない。あなたが人生を脱いで本質だけになるとき、何があなたにとって重要だろうか。世界でやるべきことをやっているとき、この本質は無視されるべきではない。

 

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