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 ナーラダはマントラの力によって行きたいところどこへも行ける聖人である。彼は好きなときにいつでも精神世界で至高者を訪ねることができたことが知られる。ある日彼は儀礼の専門家でたくさんの弟子を持っている学者のようなバラモンと出会った。「シュリー・クリシュナに会ったら」と彼はナーラダに言った。「いつ彼と会えるか、彼に尋ねてもらえませんか」

 のちにナーラダは文字の読めない靴修理屋と会った。彼はだれかの靴を直すとき、パンパンと音を立てながら鋲を打っていた。「あなたがシュリー・クリシュナに会うとき」と彼は言った。「どうかこの小さな魂が主の恵みを受けることができるかどうか聞いてみてくださいませんか」

 ナーラダがシュリー・クリシュナに会ったとき、彼はふたつの質問を提示した。

 シュリー・クリシュナは答えた。「バラモンに伝えてください。何百万もの誕生があったあとでも、わたしと会うことはできないでしょうと」

 ナーラダは困惑した。バラモンは情け深い男で、宗教儀礼にも通暁していた。

「それでは靴の修理屋はどうでしょうか」

「修理屋はこの人生でわたしと会うことができるでしょう」

 ナーラダはいっそう困惑した。どうしたら低カーストの靴の修理屋がバラモンよりも価値があるのだろうか。

 ナーラダの目に浮かんだ問いについて考えながら、シュリー・クリシュナは言った。「あなたがわたしと話しているときわたしが何をしているか尋ねられたら、わたしは針の目にゾウを通していたとお答えください」

 何日かのち、ナーラダは学者の集会で哲学について講義しているバラモンと会った。

「私はシュリー・クリシュナと会えるでしょうか」と彼は尋ねた。

「クリシュナは、何百万もの誕生のあとでもあなたは彼に会うことはないでしょうとおっしゃっていました」

「何だって?」とバラモンは叫んだ。「ばかげている。あなたは私がだれか知らないようだ。その厚顔無恥な態度のおかげで苦しむことになるだろう。人々は私をあがめているのだ。あなたがシュリー・クリシュナに会ったというのも信じられないな。もしあなたが本当に主に会ったというのなら、主は何をなさっていたのかね」

「主は針の目にゾウを通そうとしていました」

「ありえん」バラモンは感情をあらわにした。「おまえは嘘つきだ、ペテン師だ! ここから出ていけ!」

 すぐにナーラダは大きな菩提樹の下の靴の修理屋のところに走っていった。「わが愛する主はわたしに慈悲を見せていただいたでしょうか」と彼は尋ねた。

「あなたはこの人生で主と会うことができるでしょう」とナーラダは答えた。

 靴の修理屋は感謝のあまり涙を流した。「どうか教えてください、あなたが主と会われたとき、主は何をなさっていたでしょうか」

「針の目にゾウを通していました」

「ああ、なんとすばらしい」と靴の修理屋は叫んだ。

「あなたはそのようなことが可能だと信じますか」ナーラダは尋ねた。

「もちろんですとも」靴の修理屋は答えた。「わがクリシュナは何でもできます。結局、主はとてつもない力を持っておられるのです」。靴の修理屋は、彼らが陰に坐っている菩提樹から地面に落ちた種子を拾った。「あなたはこの大きな木が見えますか」彼は尋ねた。「そう、クリシュナはこの大きな菩提樹をこの小さな種子の中に入れたのです。この木にはもっと種子があり、それは森全体の巨大な木々を満たしているのです。そんな主にとって針の目にゾウを通すことがむつかしいでしょうか」

 

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