左の略図を見れば一目瞭然、四つの大河が雲南省の北西部に集まり、そこからそれぞれの方向へと伸びている。
四人の人生にたとえたくなるのは、私だけではないだろう。まったく別のところに生まれた四人がある時期ある場所で出会う。しかしまた別れて、それぞれ別の進路を取り、最後はみなひとかどの人物になって、大海という大きなゴールに達する。
四つの大河は左からエーヤワディー川(独龍江)、怒江(サルウィン川)、瀾滄江(メコン川)、金沙江(長江、揚子江)。合流地点から源流がもっとも近いのは独龍江で、チベット自治区東南隅の察隅県の東に源を発している。怒江の源流はチベット自治区のナチュのさらに北方のタングラ山脈である。瀾滄江(チベット語でザチュ)や長江(チベット語でディチュ)の源流は青海省南西部の高山地区だ。
この四つの大河が集まった地域を東西に横断するのは容易ではない。川と川にはさまれた山岳も標高四千mを越え、車道はもちろん通っていない。麗江から独龍江をめざすにも、迂回しながら車で移動するしかない。
だから独龍江はシャングリラ県や徳欽県と距離的には近いけれど、はるかに遠かった。近年独龍江地区へ貢独公路が通じているが、それができる前は、貢山から高い峠を越えなければならなかった。しかも半年間は峠が雪に閉ざされていた。観光開発が進んでいるとはいいがたく、まだまだ辺境の地であることにはかわりない。