オカルト・アメリカ 

第5章 通販予言者 

 

耳にささやかれたことを、屋上から叫べ 

――マタイ伝 1017 

 

 ずらりと並ぶニューソート(新思考)の旗手たち。彼らはそれぞれのバージョンのニューソートの福音書を持ち、喧伝した。そして多くの読者、聴講者を獲得することに成功した。一方でフランク・B・ロビンソンという名の男は一味違う存在感を示している。大恐慌のはじまりから第二次大戦後の何年も後まで、この体格のいいアイダホの薬剤販売者は、新聞や雑誌、ラジオで広告を打ち、彼自身の宗教信仰を通信販売で広めた。

 彼はそれを「サイキアーナ(Psychiana)」と名づけた。そしてその思想はニューソートの基本となり、パッケージにされて、空前の数の聴取者に売られた。実際、ロビンソンがこの世を去る頃には、彼は予約をもとにした推計で200万人もの信奉者を集めていた。レッスン・プランの購読となるとそれよりもはるかに多く、地上の八大宗教の総帥になることもできそうだった。

 彼は自慢げに通信社のレポーターに向かって「結果は保証いたします。もしご満足されなかった場合、お代はお返しいたします。世界で唯一の返金保証宗教ですよ」と語った。

 ロビンソンが存命中にセンセーショナルな騒ぎを起こしたにもかかわらず、実際のところこの40年のアメリカ宗教史に記載されることもなかった。大学の町アイダホ州のモスコウは、ロビンソンが宗教的名声を得たときの地元であり、通販帝国もここに築いたはずなのに、彼の名をとどめるのは、生前に郡(カウンティ)に彼が寄贈した公園くらいのものである。

 しかしメディア福音伝道師としてのロビンソンの方法――通販スタイルでマーケティングをつかみ、神秘的な考えを大衆化すること――は、彼の組織をはるかに超えて人々の心に存在しつづけている。実際サイキアーナによって、伝統的な集会や礼拝が衰退していくなか、多くのアメリカ人が実践的な、同時に癒しの宗教を欲していることが明らかにされたのである。多くのアメリカの教会が人種隔離政策のもとにあったとき、言葉を選んだ彼のキャンペーンは社会の平等と宗教の共存というテーマを強調した。

 これは、驚くほど有能だが驚くほど弱点がある宗教的リーダーのもとに、勝利がやってきたかと思えばすぐに失われたという物語である。彼の成功と失敗のなかに、アメリカを席巻した神秘的宗教の歴史があるのだ。