(4)

 瞑想を実践しながら育む第三のクオリティは、不動心と明確な視野を培う話のときに、わたしはそれとなく示しました。つまり苦しみを持ったまま坐って瞑想を実践するとき、それは必要とされるのです。実践のなかで育てた分離した特性として語るのはとても重要なことだと思います。というのも感情的な苦しみを体験するとき(体験しようとするとき)、しばしば間違ったことをしているような気になってしまうのです。わたしたちの内部で有機的に高められる第三の特性は、勇気を育てること、すなわち徐々に勇気を持つようになることなのです。思うにこの「徐々に」はとても重要です。というのもそれはゆっくりとしたプロセスだからです。時間をかけて、不愉快なことや人生の試練、苦難を乗り越えていく心の強さを身につけていきたいものです。

 瞑想というのは、自分自身の何かを劇的に変化させるものというより、変化のプロセスなのです。瞑想を実践すればするほどわたしたちは心を広げ、人生において勇気を持つことができるようになるのです。瞑想をしているときに、あなたはけっしてやり遂げたとか、ゴールに到達したとかいう感覚を持つことはないでしょう。あなたは十分リラックスして、内側にあるものを理解するようになるのです。この変化のプロセスをわたしは「栄誉」と呼ぶことがあります。わたしたちが勇気を増していくとき、洞察の瞬間に心打たれるのです。この洞察力によって、これらの感情が生まれるままにするのです。コンセプトとして、わたしたちの何が間違っているのか、世界の何が間違っているのかということをわたしたちは考えようとはしません。こうした洞察の瞬間は座して瞑想をする間に生まれてくるものなのです。瞑想は勇気を要します。それは時とともに成長するのです。

 この育まれた勇気によって、わずかではあるけれど、わたしたちはこの世界観の変化をとらえることができるのです。瞑想によってわたしたちはいままで見ることができなかった新鮮なものを見ることができるようになり、いままで理解することのできなかった新しいものを理解することができるようになるのです。わたしはこういった瞑想からもたらされるものを「恵み」と呼びます。瞑想によってあなたはいつものやりかたからいかに脱するかを学びます。そこにはあきらかにすべきあなたの智慧があるのです。もはやこの智慧を抑圧する必要はないのです。

 あなたがもっともひどく落ち込み、それを身に染みて感じる勇気を育み、また坐って瞑想をしながらそれを感じるとき、あなたはメンタルの世界でいかに心安らかで安全であるかを理解することになります。というのも、この点において、感情があふれかえっているとき、実際あなたは感覚および感情の下に流れるエネルギーとかかわりを持ち始めているからです。この本で学ぶように、あなたはできるかぎりこの世界を、物語を、あるがままにさせはじめます。そのときあなたはただそこに坐っているだけなのです。そしてもしそれが不愉快であっても、記憶を、つまりあなたの感情の物語を保たなくてはいけないと、あるいは切り離したいと、感じていることを理解するでしょう。また何か楽しい夢想世界へと入っている自分を発見するかもしれません。実際のところ、秘密を打ち明けるなら、これらのどれもあなたは欲していないのです。心の一部は熱心に目覚めたいと、あけっぴろげにしたいと思っています。人類というのはより生き生きと、目覚めていたいと考えるものです。しかし一方で人類は現実のエネルギーのはかない、変わりやすい性質に不安を感じてもいるのです。シンプルに言いますと、心の大部分は、夢想や計画に安らぎを見出しているのです。だからこそ瞑想の実践は簡単ではないのです。感情的な落ち込みを経験すること、またこれらのクオリティ、すなわち不動心、明確な視野、勇気を育むことが実際にあなたの習慣的なパターンを揺るがすのです。瞑想は私たちの手足を縛っているものをゆるめます。すなわち苦悩を永続させているものを、つまり自らをがんじがらめにしているものをゆるめるのです。

 


⇒ つぎ