精霊儀礼(ナップウェ)
                                宮本神酒男
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ナッカドー6人のうちの5人。

 太鼓師匠(ペッ・サラー)の語る精霊をつぎのようにまとめてみた。精霊儀式(ナップウェ)の内容とほぼ一致している。

 昔、ある村人の夢の中に女の精霊が現れ、金の葉を田んぼに捧げるように言った。そのとおりにすると、稲がよく生った。ほかの人々もまねて金の葉を捧げると豊作になった。田んぼには祠がたてられた。人々は家の中にも祠を作った。それから人々は踊りながら村に、川に、川の中の島に祠をたてた。

 家の中の祠の竹筒に葉を入れ、家の精霊ソンブリー・ナッSaun bri nat)を祀った。

ナッカドーの家の中にあったソンブリー・ナッ。

 ナッは内側のナッと外側のナッに二分される。内側のナッのなかでもっとも重要なものとされるのがサックラ(タジャーミン Thakyamin)、すなわち帝釈天(インドラ)だ。37のナッのなかでもつねに最初に挙げられるのがこのナッである。ブッダと同一視されることさえあるのだ。

 須弥山(min mo taun)に七対の兄妹のナーガが住んでいる。妹はパンミースと呼ばれる。ナーガたちはマーユー川(Mayu)へ踊りに行く。マーユーマ(ゲイの意味をもつ)は川の名であり、ナッの名でもある。

 カウン・ゼイン・シャン川のほとりにクラウンプル村があった。バガンから来た王が国を治めていた。7人の王妃がいたが、もっとも若い王妃はマーユーマと呼ばれた。(ゲイではなく、女性である)

 王は船の王宮を作り、その船で旅をした。ブラワ・マウカイェという場所に着いた。そこでは川は深く、水が渦巻いていた。王妃は妊娠していて、双子を宿していた。これは穢れとみなされたため、船が沈没しないよう、彼女は川に落とされた。ふたりの赤子とともに王妃はナッとなった。

 双子の兄弟は王のもとにやってきた。(死んだはずなので、守護霊になったということだろうか)ひとりはアウンダイといい(島の名でもある)もうひとりはペンザンマウ(これも別の島の名)といった。彼らはマーユー川で舟に乗って競争をした。精霊儀式のなかでもひときわ目立つ躍動的なシーンである。

 女の精霊ラッマウンマは、ラッマウン川の島に住む。精霊儀式のなかのラッマウンマの踊りはよく知られる。

カラ(Kala)すなわちインド人の精霊は、ラザRaza ラジャ、王)、パッサーPassa)、レインラヒンドゥー婦人の四種。これらは外側のナッ。

 サドアウンの丘の精霊サドアウンThadoi aung)。

 遠くヤンゴン・デルタを見る精霊マウン・ニュ、すなわちニュ王。

 シュエビン兄弟(シュエピンジーとシュエピンガレーなど多数の綴りあり)、いわゆるタウンビョン兄弟。前節のシュエビャインと似ているが、おそらく別の神格。母はポッパ山のメイウンナーMewunna)、すなわちポッパ・メドー。父はビャッタ、ビャッウィ兄弟のうちのビャッタ。ビャッタはカラ(インド人)である。

 ソームンラ(Sawmunhla)はバガン国王アノーラター(在位1044-77)のお気に入りの王妃だった。アノーラター王は仏歯をもとめて雲南の南詔国(当時は大理国。あるいはシャンか)へ遠征した。南詔国では現世のためにサンディー像を、来世のために仏像を崇めていた。アノーラター王は結局仏歯の入っていた箱と玉製の仏像をもらって帰ってきた。その頃アノーラター王はモー国(シャンの国。上述の南詔国と同一か)の王女ソームンラをもらいうけた。

 ソームンラのイヤリングは夜になると妖しく光ったので、人々は魔女ではないかとささやいた。じつはほかの王妃の謀略だった。ソームンラは王宮から追放され、外をさ迷い歩くことになる。のち疑いが晴れて王宮に戻ったあと、マンダレーにシュエザヤン・パゴダを寄進した。ソームンラはサンディーマと呼ばれる精霊となった。クリ・サンディー・マウンビー・ナッと尊称で呼ばれることもある。

 バグー(ペグー)出身の武勲にすぐれた王はバグー・ナッとなった。

 ソブァ・ナッSobua nat)。

 九つの町の主、コーミョーシャンKo myo shin)は、タガウン王のこと。外のナッ。白い象と白い馬をもつ。

 東を守るフリーサンベー、西を守るアナウッ・サインダム

 テンドン川のランニューアウン

 トーヒュアシャン川のローラーマRorama)。

 カラダン(Kaladan)川のリグレイマ

 レムロ(Lemro)川のンガアウンNga aun)。

 ココナッツ割りで象徴される精霊はセインプルSein pru)、白いダイアモンド。

 バラモンBrahman)も内側の精霊。妹はアディナ

 呪術師であるゾージー

 なりたての僧侶の精霊、モンヤングリ

 身体障害者の精霊、トゥパ

 

 以上が37の精霊(ナッ)だが、ほかにも多くの精霊が精霊儀式(ナップウェ)のなかに登場する。

 

 クラゼンプル

 ウェンティの丘のミーセンプル。町を守護する。

 町を見守るクワンジー・センリプル

 レンダウンの丘のメイウープル

 王妃のためのバンダイン宮のセインヤンプル

 王宮の守護神ンガマウンプル

 ワッセイ村の守護神、サンカインプル

 フラッカラプル

 バンドゥープル寺院のクララープル

 セイワー川近くの精霊、セイベープル。川の横の大きなバンヤン樹に住む虎の精霊、ターメンジャ

 マヒンジー

 ファラボー・パゴダ近くの精霊、白い蓮華、クラボンプル

 セインガープル

 ニャジープル

 ウィジー村のグルニャンプル

 門のドナプル

 プランジー

 ミャラープル

 サウンワンプル

 ジャウレイキー

 サンシャージ村の精霊、白いコットン、ワーグァンプル。レーメッナ・パゴダ近く。

 トゥイ・マー・プル。トゥイは末娘の意味。ニャンバンジー村。

 王宮近くのナッ・マウン

 精霊儀式最後の水をかぶるシーンは、ナーガラジャ(白い象)。