番外編 パゴダUFO起源説 宮本神酒男
Ratanapon Paya
シッタウン寺院の裏口を抜け、苔むしたアンドウ・パゴダ群に囲われたとき、私は息をのみ、立ち止った。それは遺跡という静的なものではなく、宇宙からやってきた船団のような迫力があった。釣鐘という形容がよく使われるけれど、UFOのほうがぴったりときたのである。
前々からパゴダ(ストゥーパ。ビルマ語でパヤ)とUFOは似ていると思っていた。しかしラカインのムラウーのパゴダほどUFOを想起させるものはなかった。私はなにもここのパゴダがUFOに似せて作られたと主張したいのではなく、パゴダが人間の集合的無意識、あるいは元型の反映であり、UFOもまたそうであるなら、両者が類似するのは当然のことだと言いたいのだ。とはいえUFOが人間の心理の産物だと私は考えているわけではなく、宇宙人か地底人か人間かはともかく(UFO型の乗り物の開発は米国やソ連で進められた)上下左右に移動できる理想的な乗り物なのである。
Kothaung Paya
しかしパゴダの起源がUFOだとする説は、珍説と言い切れない。インドの古典である『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』、『バーガヴァタ・プラーナ』などに登場するヴィマーナは飛行船であり、またおそらくパゴダの原型なのだ。このヴィマーナを駆使する種族が異星人であるとする「古代宇宙飛行士論者」の説はぶっ飛びすぎだとは思うけれど。
このトンデモ説に耳を傾けてみよう。
シャールヴァ(神名)のヴィマーナ(飛行船)は『マハーバーラタ』や『バーガヴァタ・プラーナ』の中に見出せる。これは巨大な軍事用の乗り物で、軍団や武器を運ぶことができた。それはシャールヴァが非人間のテクノロジー専門家マヤ・ダーナヴァからもらったものだった。『プラーナ』群や『ラーマーヤナ』にも小さ目のヴィマーナのことが記されている。なかには個人乗客用の心地よい乗り物も含まれていた。それらはデーヴァやウパデーヴァ、すなわち神々によって使用され、人間が利用することは許されなかった。(リチャード・L・トンプソン)
以上の引用はじつはトンデモ説ではなく、まさに文献に記されているとおりなのだ。『日本書記』に出てくる天の磐船(いわふね)そのものが神話であってトンデモでないように、ヴィマーナは神話なのである。現代ヒンディー語では飛行機のことをヴィマーナという。インド人ならだれもが古代の神話世界において、神々がヴィマーナという飛行船に乗っていたことを知っているのだ。
このヴィマーナにはいくつかタイプがあるが、一部はパゴダ(ストゥーパ)とよく似ていた。それはUFOとも似ているのだが、UFOといってもアダムスキー型円盤ではなく、釣鐘型円盤なのだった。