雨に煙るパンムロン市場 宮本神酒男
ムラウー側の岸辺で舟に乗ってレムロ川を横切ると、そこはパンムロン村の船着場だ。村の市場には山で採れた幸が集まってくるので、樹液や葉上の露、微小な生き物、苔、腐植土、そういった森のあらゆる息吹と香りもまたやってくる。ジャングル・ビーンズ(正式名称がわからない)はそのような山の珍味のひとつだ。後日、ナッカドー(シャーマン)の家を訪ねたとき、私ははじめてこれを口にした。ホタテをやや薄くしたような大きさで、手にした感触ははじめてだったが、なじみぶかい味わいだと思った。栗の味に似ていたのだ。手のひらにのせて、しげしげと眺めた。こんな山のホタテからどうしたら栗の味がするのだろうかと、不思議でならなかった。
雨が降り続いていたので、メイン通りはぬかるんだ。売る人も品物もすべて濡れている。