忘れられた民、ロヒンギャ ハビブ・シディキ 

ロヒンギャ論争 

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 アラカンのロヒンギャの苦境についての記事を書いたあと、私(ハビブ・シディキ)はラカインの仏教徒が「ロヒンギャはビルマに属していない」、そして「ビルマのラカイン州(かつてのアラカン)には属していない」と主張していることを思い出した。このプロパガンダはあまりにも行き渡りすぎていて、話は膨れ上がってしまった。それはSPDC(国家安全平和開発評議会、すなわちミャンマーの軍事政権機構)やアラカン内外の超国粋主義者、人種差別主義者であるラカイン人仏教徒の共犯者によって守られてきた。直接的に論争のことを知らない人々は、ロヒンギャの起源をめぐる疑惑や疑念をむしろ楽しんでいた。彼らはロヒンギャがバングラデシュからやってきた外国人か、新しい定住者とみなしていた。このように言われることは、ビルマ人による大量虐殺や民族浄化の被害者にとってとても不幸なことだった。

 これらの犠牲者は地球上のほかの人々と違って、約二百年前の英国の占領以前に家族がビルマに住んでいた証拠の書類を示す必要がある。国際法に照らせばこういった恣意的な試験は違法であり、根本的には犯罪である。結局ロヒンギャの市民権を否定し、先祖伝来の地から追い出す方向へギアをかけているのだ。同じことが大多数のラカイン人やビルマのほかの民族グループ、宗教団体にも適用されるなら、ビルマの市民権を証明するのはむつかしいだろう。

 ビルマの軍事政権がやっていることは、あきらかに犯罪であり、国際法とロヒンギャの人々の基本的人権に反している。ビルマの軍事政府はロヒンギャが長い歴史、遺産、文化、長い歴史の中で培ってきた独自の伝統を持っていることを誰にも知られたくないようだ。アラカンにおいてロヒンギャの権利を否定するのは、アメリカでネイティブアメリカンの存在を否定するようなものなのだ。

 よく知られているように、われわれ人類の歴史において、無知は諸悪の根源である。それはしばしば疑念や疑惑へと導き、結果的に暴力や破壊をもたらす。ビルマの多数派仏教徒が、ムスリムやその他の少数派宗教信者が彼らについて知っているほどに知っていたなら、ビルマは現在のような外国人嫌い、人種差別主義、憎悪が支配する国にはなっていなかっただろう。

 

 興味を持った読者には以下の本やジャーナルを推奨したい。これらはアラカンの人々、とくにロヒンギャの歴史について学びたいときに有益である。

●アブドゥル・カリム『ロヒンギャ:歴史と文化の簡単な考察』(アラカン・ヒストリカル・ソサエティ、バングラデシュ、2000年6月) 

モハンメド・アシュラフ・アラム『アラカンの歴史的背景』(アラカン・ヒストリカル・ソサエティ、バングラデシュ、1999年) 

モシェ・イェガル『ビルマのイスラム教徒 少数民族の研究』(WeesbadenOtto Harrassowitz 1972) 

 

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