第七章

ヌ・シミ・ハンガ(新しい死者)

 新しい死者よ! 冥界への導き手アマリチャと安息の地の主バリチャが刑罰を受けないための手ほどきをしてくれるだろう。いまおまえは冥界への道を辿ろうとしている。ここに来た当初は現世での記憶を保持していたことだろう。現世では好きな物を食べることができていたが、こちらで食べられる物といえば花と胡麻だけなのである。それだけでは飢えを満たすことはできないが、喉の渇きもまた癒すことはできない。それどころかおまえは水を探し当てることもできない。火をつけるにも木を見つけることができない。

冥界への導き手と安息の地の主は新しい死者に向かって言う。

新しい死者よ! われわれの言葉をよく聞くのだ。われわれの魔術的な言葉と教えを聞けば、岩を乗り越え、怒涛の川も渡り、もう一つの世界へ行くことができるだろう。冥界へたやすく行くことができるだろう。そこは人間だれもが行く場所である。おまえはしっかり心の準備をしなければならない。

家の中から外に出ようとすると、ベランダに水瓶が置いてある。その水瓶をおまえは水で満たすだろう。さらに歩くと、家の玄関に出る。玄関から庭へと進む。庭にはおまえが生前に集めた薪が山のように積まれている。薪の山から斜面を上がるとたくさんの人々に出会う。生前とおなじような感じで会話を楽しんだあと、別れを告げなければならない。さらに上がっていくと、とても親しい友人と出会う。お互いに離れられない親友同士だったので、別れ難いが、暇を告げるときである。さらに上がっていくと、村の男と女が道を遮る。おまえは両手を合わせて行くことを懇願しなければならない。

新しい死者よ! おまえは魔術的な言葉と教えを思い出し、安息の地へ向かっていくのだ。さらに上がると、ダスクラ(Dhhaskula *Darchula?)市場がある。市場の上方の寺院で、おまえはダルチョ(旗)とアクシャタ(米)を捧げて神を礼拝する。それからアバラダ(Abalada)に至ると、おまえは歩く速度を速めるだろう。急ぎ足でバガジャダン(Bhagajadan)に達すると、階段がある。階段にスレートを置き、登りやすくする。ブタラ(Buthala)、ドクト(Dokto *Duktu)、バビタ(Babyitha)を経てサヤラガート(Sayalaghat)に達すると、川があり、橋を修理して川を渡る。カリ(Kali)川とダウリ(Dhhauli)川が交わるところで色とりどりのダルチョ(旗)を捧げ、ダウリ川に小さな橋を架けて上方へ向かうのである。(*翻訳の間違いでカリ川とダウリ川の交わるところから上っていくと思われる)

 さらに上がってガガリ(Gagari)の女神が住まうところへ至ると、おまえはダルチョ(旗)と塩を捧げなければならない。そしてアクシャタ(米)を捧げる。

 新しい死者よ。目的地までの長い道のり、いくつもの困難と障害に立ち向かわなければならない。ずっと歩くと、ジュンティ(Jyunti)近くのマンガ・タナ(Manga Thana)に着くので、色とりどりのダルチョと花を捧げる。ジュンティの川に架かる橋を修理し、川を渡り、上方に歩いていくと、ビクマダル(Bikhumadaru)である。ビクマという女性を記念して造られた古代の記念碑であり、おまえはそこで水を撒き、霊の渇きをいやすだろう。そのあと川のほとりにあるマイタナ(Mai Thana)、すなわち女神寺院で色とりどりのダルチョを捧げる。さらに上方の隣の村に行き、地の神ビンマデーヴァ(Bimma Deva)に塩を捧げる。その上方にはシャンサイタナ(Syansai Thana)、すなわちマハデーヴァ(Maha Deva)の寺院があるので、ここでもダルチョやアクシャタ(米)を捧げる。さらに上ってタカウン(Takaun)に着く頃になると岩が多くなり、岩の合間を進むことになる。チャウダシュ・パティ(Chaudash)に着くと、白い石で作ったシヴァのリンガを立て、アクシャタを捧げる。同様に山頂のトゥルティナ・シャヌダ(Tulthina Syanuda)寺院でもシャンビンドゥ(Syanbindu)にダルチョを捧げる。隣のハヤ・ガバラ(Haya Gabala)という神も祀る。そしてバルワ(Baruwa)洞窟、ニランダ(Nilanda)、シルダ・シャンバト(Sirda Syanbato)、シルカ(Sirkha)、チュナカリダン(Chunakaridan)、サマティシャ(Samatisya)を経て、ラウキン(Raukin)山の頂上に至る。そこでおまえはダルチョを捧げ、灯明をつけ、鈴を鳴らすだろう。

 ジブティ(Jibti)から上がっていくと、ゴラマラ(Golamala)すなわち丸い巨石が立ちはだかっている。おまえは弓で巨石を射て、先に進むことができる。さらに上方へ行くとボラダン(Boladan)に至り、おまえは石の下に棘だらけの木を置いて、魔物の追跡を防ぐ。カリナフ(Kalinafwu)からマラパ(Malapa)へ上がっていくと、川があるので、橋を架けなければならない。シャーウン(Syaaun)から上がってラチャビ(Rachabyi)すなわち耳の形をした巨石に辿りついたら、ギーを捧げる。さらに上方のカタラヤ・パニ(Kataraya Pani)では、一対のダルチョを捧げる。その上にあるのはもっとも大きな泉、パッティ・ビャサ(Patti Byasa)。(*ビャンスでもっとも大きな泉?)ここで礼拝する。その上方の一対のくるみの木の下で、サラナクシェ(Salanakshye)すなわち甥と、バグラ(Bagura)すなわち叔父に出会い、ブディ(Budi)村に招かれて、きちんと挨拶をしなければならない。さらにコクチロクティ(Kokchirokuti)などを通って、上方のシャンビンク(Syanbinku)に至り、ビンク(Binku)神を拝み、またディヤナマジュン(Dhyanamajyun)神には祖霊界への道案内を頼むだろう。ヤルラ(Yarula)、すなわちヤクの角によって穿たれた穴に着いたら、ほんの数分間の休憩をとる。そして上方に進みクシェトゥ(Kshyetwu)に至ると、神が住まう聖地シャマンタ(Syamantha)で鈴を鳴らし、祈りをあげる。さらにシャカシナ・リキ(Syakasina Likwi)やチャウフ・ダルティ(Chaufwu Darti)を経て、アルタフ(Altafwu)に到着する。

 さらに上がるとカルジャ・グンカ(Karja Gunkha)に辿りつき、色とりどりのダルチョを供え、白い籾米を女神に捧げる。さらに上がるとガブリャガ(Gabryaga *Garbyang)の人々と出会うが、正式にきちんと接しなければならない。そしてカヒンドゥ(Kahindu)の国王と会ったら、国王を満足させなければならない。そのさらに上方のダシャラ(Dasyala)に着いたら、棘の木の枝を切り、道の真ん中にある石の下に挿す。さらにシャンタ(Syantha)では橋を修理し、カリ川を渡る。そしてダガル(Dagaru)の人々の寺院に着いたら、ダルチョを捧げ、アクシャタを撒いて祈る。ジャクティ(Jyakti)に着いたら、チルウラー(Chhilwulaa)で賭博をする。おまえはそこでもっともたくさんのお金を賭けるだろう。そこから上がってタビ(Tabi *Nabi)村、グンジ(Gunji)村、ナパラチュ(Napalachyu *Napalcho)村など四村によるピアウンパ(Pyiaunpa)共同寺院に到着したら、杉の木の旗を立て、白いアクシャタを撒いて神に祈りを捧げる。そしておまえはヤラファナ・カワ(Yarafana Kawa)、シャンドゥマ(Syanduma)、サリマカン(Salimakan)、クルシャーラ(Kursyaala)、ナチティ(Nachuti)、タタロン(Thatharon)、トゥラシ・シャヌパタ(Tulasi Syanupata)、トゥルティンフ(Tulthinfwu)を通過し、コシナタ(Kosunata)に着いたところで、矢を放ち、道を開けるだろう。パクシャタマ(Pakshyatama)では、リンガを立てる。その上方で石に下に棘の木の枝を挿し、魔物を退治する。さらに上って大きな角と体躯をもったナワラ(鹿)に出くわしたら、草を与える。ダラマニ・シャナ(Daramani Syana)を通ってリプカケ(Lipukake *Lipu lekh?)に着いたら、シヴァ・リンガを立て、ダルチョを捧げる。

 リプ峠(Lipu *国境上の峠)を越え、ボビティンダラー(Bobityindalaa)に着いたら、おまえは大きな丸太を岩の下に置き、障害物はなくなるだろう。導師すなわちアマリチャ(Amaricha)とイシュタナ・プラダルシャク(Isthana Pradarshak)すなわちバリチャ(Barhicha)は新しい亡魂に呼びかける。新しい死者よ! ナマシャナ(Namasyana)に着いたらお茶を飲む準備をせよ。クシミグラドゥマ(Kshyimiguladuma)に着いたら、蛇の守護神の聖水によって水中に棲むインドラ神の眷属ティニュンタ(Tinyunta)を清めよ。それから白いアクシャタによって祀り、目的地に近づくだろう。ポクタ・ポクトゥ(Pokta poktu)、タシンカ(Tasinka)、トゥジフォクチャナ(Thujifokchana)などを通って、その土地の習俗にならって神々を祀る。ビャサ(Byasa *Byans?)やチャウダサ(Chaudasa *Chaudans?)の(人々の?)助言をもらい、すみやかに目的地に達することができる。ササラガウンカ(Sasaragaunkha)に達したとき家畜を養うドクパの皮袋(Karkkha)が行く手をさえぎるので、おまえは足でそれを払いのける。カヤラヤ(Khayaraya)寺院に着いたらリジヤム(Lijiyamwu)やマンボ(Manbho)といったマントラを唱え、ラバダ(Rabada)、すなわち祭司とすべての経典を誦さなければならない。チュマンタ(Chyumantha)、タユ・ジャンパ(Twayu jampa)を通って、ジョラワティハ(Jorawatiha)にある記念碑(Zorowar Singh?)、ツユ・シャンマンタ(Twuyu Syanmantha)に着いたら、記念碑を青い色で塗り、ギーによって清め、ふたたび祈りを捧げたあと、灯明を点す。(*ツユはおそらくトヨsTod yod。)ガル(Garu *Gurla Chu?)川に辿りついて、人を運ぶヤクがいなっかたとしても、剣によって川を渡ることができるだろう。ラジュグナ(Lajugna)、サンガタプヌ(Sangathapunu)、マジャタ(Majatha)、ワルダヤティ(Waldayati)を通ってチュクラ(Chukla *Gurla?)山の頂上に達し、マナサロワル(Manasarowara)湖のまわりを歩く。

 バルカタ(Barkhatha *Barga?)でチャワル牛(chawar)と出会っても、心配することはない。ドゥキュ・ヤンティ川(Dukyu Yanti)に辿りついたら、剣によって川を渡ることができる。しばらく歩くと、フィヤチャンラパー(Fiyachanlhapaa)が呪語をかけてくるだろう。そしたらおまえも呪語を返せばいい。それから上がっていくと、交易の中心地カルカ(Kharka)に着く。おまえも交易に加わる。そしてブルンダン山(Burundan)、すなわち白いオガラ(Ogala)の山を越え、ムジュラタ川、すなわちインド神話でおなじみのバイタラニ川(Vaitarani)にさしかかると、おまえは難渋することになる。チャワルの助けなににバイタラニ川を渡ることはできない。チャワルが拒むようであれば、その右の角に刻まれた徴、ラタマ(rathama)を示して、おまえに属することを知らしめるがいい。おまえはクシャタマ(Kshyatama)、すなわちモニュメントを立て、板を渡して川を渡る。ラクシャタマ(Rakshatama)に着いたら、白石を捧げるがいい。そしてキュンルン・グイパトゥ(Kshyelun Gwipatu)の領域に入っていく。まずは第一のパトゥ(Patu)だ。

 

 私が生きているとき、あなたはかまってくれなかった。死後、歓迎してくれたとしても、私はそれを拒むだろう。それは見せかけにすぎない。

 第八パトゥに到着すると、古い魂たちはおまえを歓迎するために集まってくる。おまえは彼らの花の捧げ物を受け取らなければならない。上がっていって第九パトゥに着くと、今度は彼らがおまえに贈り物をせがんでくる。しかしおまえは言う、「私はとても貧しい暮らしを送ってきた、だから持っているものといえば三つの胡桃だけである」と。その胡桃を彼らの前に放ると、彼らは休息の場所を離れて胡桃を取り合う。その隙におまえは空いた席をせしめることができるのだ。こうして新しい死者の魂は祖先の場所を得ることができるのである。

 

 新しい死者よ! いまやおまえは先祖の場所に席を得ることができたのだから、さまよう必要はない。あちこち歩き回ったところで靴がよれよれになるだけの話だ。この世界ではもう友達を探すことはできない。バダティナチクラ(badatinachikula)という帽子ももう擦り切れるくらいに使われ、ボロボロだ。それゆえおまえは導師である道のプラダルシャクとイスタンのプラダルシャクのことばに耳を傾けよ。そうして今度は来た道をたどってこの世にもどってくることになるのだから。