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「ずっと昔のことだが」とパイユート族の長老は語った。「ハヴ・ムスヴという部族がパナミント山脈に移動してきた。彼らは地底の大洞窟に都市を築いた。彼らは地域の好戦的な部族から隠れたかったので、人里離れた場所に住みたがったのだ」

 近隣に住むパイユート族は、しかしながら、彼らの存在に気づいた。ハヴ・ムスヴ族は技術的にも、文化的にも他より進んでいた。彼らが旅行するときは、銀色の飛行船に乗った。空飛ぶ円盤は大洞窟から現れ、雲の中に消えていった。

 パイユート族は地底の隣人たちを怖がり、彼らと接触しないように心掛けた。しかし伝説によれば、パイユート族の首長はハヴ・ムスヴ族のもとを訪ねた。

 その少し前、彼の若い妻が突然死んだ。悲しみに打ちひしがれた彼は、さまよい歩いたすえ、山の中に入っていった。彼の考えでは、ハヴ・ムスヴ族のもとで死ねば、霊魂の世界で妻と再会できるはずだった。大洞窟に近づく者はだれでも一種の光線銃で殺されると言われていた。

 一方、パイユート族の民衆は首長の死を嘆き、喪に服した。しかし何週間かのち、彼はひょっこり戻ってきた。人々がまわりに集まってくると、首長は山の中で体験したことをつまびらかにした。

 彼はハヴ・ムスヴ族に歓迎されたという。彼らに案内されて、地底の都市をめぐり、言葉、伝説、智慧について教えられた。地底都市の美しさのとりこになり、また居住者の進歩した生き方に感銘を受けた彼は、すっかりハヴ・ムスヴ族の国を離れたくなくなっていた。しかしハヴ・ムスヴ族は彼に地上に戻り、会得した智慧を伝えてほしいと願ったのである。

 こうして彼は地上に帰還した。

 


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