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 彼の背丈は180センチくらいでした。姿勢は完璧で、スタイルがよく、やせすぎでも太りすぎでもありませんでした。しかし彼の頭は、わが目でとらえることができなかったのです。生きている肩の上にのっているそんな頭を私は見たことがありませんでした。
 額はとても広く、驚くほど高く、奇形といってもいいくらいでした。でも私は不愉快になることはありませんでした。それは学者の、深遠なる考えを持つ人の、奥深い学究の徒の額であったからです。鼻はワシのようで、とても大きいものでした。
 頭や顔の輪郭は印象的で、知識があることを示していました。人生経験が豊富で、いつも考えが深いように思われました。
 声もまたさわやかで、きよらかで、はっきりしていて、いつも喜びを声の調子で表し、やわらかく、大声や不愉快なトーンで話すことはありませんでした。
 驚くべき特徴は彼の髪です。髪は薄く、頭のてっぺんは毛髪がまばらですが、長く、肩まで達していました。あごひげも長く、ほぼ腰まで垂れていました。髪、眉毛、ひげのすべてが並外れて白く、純粋で、ほとんど透明といっていいほどでした。その銀色がかった白はガス灯の明かりの中の光背の輝きのようでした。
 とりわけ衝撃を受けたのは、彼の皮膚がまるで子供のそれのようにやわらかく、なめらかであったことです。欠点などありませんでした。年齢などまるでわからず、だれにも推測することもできませんでした。髪の毛を取るか、色を変えるだけで、25歳に見えるかもしれません。少し皺が増えただけで90歳に見えるかもしれません。
 すべてにおいて、彼のような者を見たことがありません。彼に近い者も見たことがありません。彼は地球の者ではないのではないか、ほかの惑星から来たのではないか、そんな考えがふと頭によぎるくらいなのです。

このまねからざる客((ドルーリーははじめ頭のおかしな人ではないかと恐れたが、すぐに受け入れた)は訪問の目的をあきらかにした。彼はドルーリーに「珍しくて興味深い話」を教えようとしていたのだ。それは見知らぬ人が書いた原稿の中に含まれていた。そしてそれを彼は大声で読み上げようとしていた。何度か彼は訪ねて原稿を読み上げた。そうしてドルーリーは質問をするようになり、論議を交わすようになった。結果的にドルーリーはこの原稿を所持することになり、三十年間守り、そしてついに刊行した。

興味をそそられたドルーリーはこのプランに賛成した。ミステリアスな見知らぬ人(けっして名を明かさなかった)は言った。「また会いに来ます、おやすみなさい」そして去っていった。

 ひとりきりになると、ドルーリーはこの出会いはイマジネーションだったのではないかと疑った。「孤立したがる特殊な習慣、不規則で激しい研究、風変わりな生活、こうしたことから理性を失ってしまったのか」

 しかし見知らぬ人(われわれは<モーガン>と呼んでいる。付録2参照)はライブラリーに戻ってくることはなかった。彼は原稿を持っていた。そして座り、大声で読み始めた。ドルーリーはうっとりとして彼の物語に耳を傾けた。

 

 


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