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 実際、彼女はもっと語った。三か月後、パーマーは読者に生まれてくる作品について告知した。

 

 私たちは<テロ>(*破壊的な種族デロに対し、テロは建設的な種族)の中のマーガレット・ロジャーズの冒険――真実の物語――である『わたしは洞窟にいた』を掲載するつもりでいます。しかしまたしてもスペースが十分でなく、締め切りも間近に迫っているため、掲載は次号ということにさせていただきます。もしあなたがシェイヴァー・ミステリーの信奉者であるなら、この作品がシェイヴァーと同じであることに確信が持てるでしょう。あなたご自身によって判断できるのです。編集者はこの作品に好意を抱くことでしょう。さて、断言できることがひとつあります。それはロジャーズ夫人が偽物を作っているわけではないことです。彼女の物語は100%ホンモノです。

 

 そしてついに1947年1月号に彼女の「真の物語」が掲載された。パーマーはまえがきでふたたび警告を与えている。「『わたしは洞窟にいた』はうそ偽りのない話のように思える。わたしたちはこの物語を同様にうそ偽りなく提示したい。そうであるかどうか、あなた自身、読んで判断していただきたい」。

 彼女の物語は冬の午後のメキシコシティからはじまる。マーガレット・ロジャーズはいつものようにボリバー通りのアメリカン・クラブの前に立っていた。寒い風が吹いていた。ぶるぶる震えながら、やせ細ったマギー(そう呼ばれていた)はお金を乞うていた。彼女には4ペソが必要だった――3ペソはヘロイン1グラムのために、1ペソは一晩の宿代のために。

 惨めさのどん底にいたマギーは――39歳の浮浪者で、ドラッグの奴隷だった――ケープに身を包んだ。祈りの言葉をブツブツつぶやいているとき、誰かが彼女の肩に手を置いた。振り返ると、そこに立っていたのはエレクトロ・セラピー研究所のケルマー博士だった。

 ケルマー博士は通り過ぎるとき、かならず彼女にお金を恵んだ。このときも彼は彼女に5ペソのコインを渡した。しかしそのとき奇妙な光が彼の目に入った。すると博士はもっと多くのコインを彼女の手に落とした。これで何かを食べ、身づくろいしなさいと彼は言った。そして近い将来、彼女の病気は永遠に治療されることになるだろうとほのめかした。

 その晩マギーはヘロインを買った。しかしつぎの夜は警察の手入れがあり、買うことができなかった。そして彼女が激しい禁断症状に見舞われているとき、横に車が止まった。運転していたのはケルマー博士だった。

 彼らは夜の中ドライブした。博士は飲み薬が入った薬瓶を彼女に渡し、飲むようにと言った。それを飲むと、彼女は眠りに落ちた。

 彼女が目覚めたとき、車は停まっていた。月は山陰の上で輝いていた。ケルマー博士は車から出た。気分が悪かったマギーも彼のあとよろめきながら外に出た。

 博士は彼女を慰めた。そして岩壁にあらがうように繁茂する木の枝葉を前に、彼は両手を上げ、歌い始めた。

 

 まるで夢のようでした。緑色の壁のような枝葉全体がスライドすると、そこにぽっかりと大きな空間が現れたのです。何が起きるかわからなかったのですが、怖さは感じませんでした。残酷な儀礼でわたしを死に導いてもおかしくなかったのですが、わたしは大胆に彼のあとについていきました。

 扉が閉まりました。一瞬暗闇に支配されましたが、すぐに洞窟は奇妙な青い光で満たされました。まるで命令されたかのようにわたしは洞窟の壁に沿って置かれた黒い大理石の台まで歩きました。そしてその上に私は横たわりました。

 

 


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