(5)

 ミラが戻ってきたとき、もうひとりの巨人がいっしょだった。フィアンセのアルシだと彼女は紹介した。金髪で、若くてハンサムな彼は頭一つ分ミラより背が高かった。彼の着ているものは彼女とよく似ていた。翼はなく、太陽の飾りをつけたヘルメットをかぶっていたが。

 ディスクに向かって話し、アルシはマギーを歓迎した。今度は彼が説明をする番だった。マギーは地下世界へ運ばれてきたのだ、と彼は言った。地下世界とは、ネフリとして知られる巨人族の国である。地上世界で育ったけれど、アルシはネフリだった。地上では彼は弁護士として生計を立てていた。ある日彼はごくシンプルに消えた。そして先祖の地に戻って「生まれ変わった」のである。

 彼は壁のほうに向かった。部屋は暗くなり、壁だけが明るくなった。そこにはオフィス・ビルから現れる年老いたアルシの姿が映し出された。彼の顔は心配事が多くて皺だらけで、幻滅のため暗かった。そして映像はマギーの姿に変わっていた。通りで物乞いし、ケルマー博士と会話を交わし、ヘロインを求める姿に。

 マギーは泣き始めた。新しい生活が与えられたことに対する感謝の涙だった。

「自分の人生でいいことなんかしたことあったかしら」彼女は自問した。「助けてもらうような価値がわたしにはあるのかしら」

 光が戻ってきて照らした。マギーの涙が枯れてきたとき、アルシは彼女を鼓舞した。「単純に運が悪かったんだよ」と彼は言った。「あなたの弱さは、人間に共通する弱さでもあるんだ」。ネフリは助けることができて喜んでいるようだった。中毒から自由になってもうすぐ彼女は地上に戻れるだろう。地上では一種の贖罪として親切な行為を実践するだろう。そしていつの日か彼女が望んだら、洞窟の世界へ戻ることができるだろう。

「ジェリス・スル・タミル」(神の祝福あれ)と祈りながらアルシは部屋から出ていった。

 それから長い沐浴とフルーツの朝食で心が安らかになった。そして医者の検診の時間になった。座席二つの「弾丸カー」に乗り――車輪のないなめらかな車はトンネルをビュッと高速で走った――ミラの運転で医療施設へと向かった。医者はマギーを検診し、もう治っていると宣言した。

 

 


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