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「サイラス・ティード博士死去:逝去してこの世に存在せず」という見出しの記事によって、死を事実として最初に報じたのは、地元の新聞フォート・マイヤーズ・プレスだった。
シカゴ・トリビューン紙がそれにつづいた。見出しの「ティードのよみがえりはまさにクリスマス」には皮肉がこめられていた。ニューヨークタイムズ紙は、もしクリスマスの翌日、ティードが復活しなかったら共同体は分解するだろうと予言している。二日後、ニューヨークタイムズ紙は続報として「ティード博士復活せず」と報じている。その他いくつかの記事には、ティードやムーブメント、シカゴのトラブルなどの要約を含んでいた。ティードは信者のために広大な土地を残した、といった誤報も流れていた。実際残されたのは借金の山だったのだが。エステロの町は、レポーターや信者からのティードの死に関する問い合わせの電報であふれていた。しかしコレシャンの人々は多くを語ろうとはしなかった。
「この地域全体が沸き返っています」と、ある信者は別の信者に書いている。「そしてここは近くで観察することができるのです」
かれらは配慮を求めた。かれらがつねに望んでいたのは、ほっておいてくれ、ということだった。ことあるごとに、とくにいまのこの聖なる瞬間においても、かれらは妨害を受けていたが、つねに静かで、孤立していることが望みだった。
昔から流れていた噂話をはじめて取り上げたのはタンパ・モーニング・トリビューン紙だった。噂によれば、ティードの信者たちはフリーセックスを実践しているという。ほかの各紙も何年も前のスキャンダルを蒸し返そうとした。ティードは妻たちを誘惑し、夫たちから奪った泥棒だというのだ。男たちは彼をリンチにするぞと脅した。こうした言いがかりや脅しからのがれるため、かれらはシカゴを去り、南西のフロリダに拠点を移し、平和な生活を求めたのである。
⇒ つづく