青年ロジャと出会い、ともにインドへ

 そうこうする間に、ひとりの若者が近づいてきた。遠くから注意するよう呼びかけていた青年だった。前世の因縁なのか。彼は私に同情し、傷の手当てをしてくれたただけでなく、背負って彼の家まで私を運んでくれた。家には髭も髪も真っ白な立派な老人がいた。老人はお茶やヨーグルトなどを出しながら、言った。

「殺された犬の命なんてどうでもよかろう。そなたの命が助かって、なによりじゃ」。

 老人と青年の介護の甲斐があって、傷はよくなった。私はそこに一ヶ月あまり滞在した。青年の名はロジャ(Lo bgya)といった。また私を救った二位の神は吉祥護法神(ペンゴン dPal mgon)と大紅司命主(ジャムシン lJam sring)であることがわかった。[マイケル・スミスはマハーカーラ(大黒天)とその明妃としている] 

 名残惜しいが、出発しなければならない。ロジャは私にどこへ行くのか尋ねた。インドだと答えると、彼も連れて行ってくれという。そこで私は「このことは簡単に決められるものではないので、家の人(つまり老人)とよく話し合いなさい」と答えた。老人は最終的には首を縦に振り、ロジャは私と旅をともにすることになった。 



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