モンユルで奇妙なインド遊行僧に会う

 曲がりくねった道を進み、ようやくモンユル地方に着いた。食料が尽きかけていたので、人家を探さねばならなかった。小さな山を登っていくと、峠に石積みのオボがあった。オボの先の道を見ていると、突然獰猛な犬が二匹現れて、吠えたててきた。そのときちょうど山の上から下ってきたのは、インド人遊行僧(アツァラ)だった。遊行僧は石積みの上に乗り、石をぶつけて犬を追い払ったのである。

 近づいて地面に落ちたその石を見ると、じつは石ではなく、中国の馬蹄銀錠(rTa mig ma)と呼ばれる銀貨だった。私はロジャにその銀貨を持たせ、遊行僧に必要なものかどうか尋ねさせた。遊行僧は「いらぬ」と短く答え、逆に「こんな石ころ、なんの役に立つというのかね」と聞き返す始末だった。

 これは一種の神通力ではないかと私は考えた。ともかくこれは銀貨にちがいなかったので、それをもって必要なものをモンユルで買いそろえ、インドの旅を続けようと考えた。 



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