アガルタ        

34 変移の館 

 

 本書はここで終わりとすべきなのだが、変移の館という名が読者の好奇心をそそるかもしれないので、ぼくともう少しつきあってもらいたいと思う次第である。

 すべてはまたたく間に起こったので、自分の行く手に現れることに対し、驚く時間すらなかった。すべては期待していなかったことであり、予測すらしていなかった。ぼくは困惑しながらサンジェルマンのあとを追い、まわりを見まわした。扉は白いマントを着た笑みを浮かべる男によって開けられた。彼は修道士だが、頭は剃っていなかった。彼の髪はレース飾りがついたウェーブ状の黒い長髪で、肩まで垂れていた。彼はマスターに対して低く頭を下げ、われわれが行くべき方向を手で示した。

 われわれは明るい、柱の多いホールにいた。ここの壁や扉、屋根は水晶でできているように思われた。おそらく水晶の岩窟である。この途方もなく大きなホールの中央には泉があり、巨大なカラフルな貝からさまざまな色の水が噴き出し、音楽を奏でていた。近くによってよく見てみると、この貝は開いていて、きらきら輝くバラ色の真珠層があり、そのなかで真珠が震えていた。こんなに美しい泉を見たことがなかった。

 ぼくが泉を絶賛しているとき、サンジェルマンはニコニコ笑っていた。そしてわれわれに前に進むようしぐさで示した。喜びに息が止まってしまいそうだった。外から入ってきた光の色がガラスの中で反射するのをぼくは楽しんだ。滑り落ちないように淡いグリーンのカーペットに覆われたガラスの階段を上がっていった。以前は気づかなかったのだが、フロアには歩くための絨毯が敷かれてあった。これらは柔らかく、揺らめいていて、このガラスの宮殿の中では役目があった。

 階段の上には扉があり、われわれはそこから中に入った。それははるかに小さなガラスの部屋で、ほのかに明かりがともっていた。クッションの置かれたベンチがあり、白い大理石のなめらかな壁があった。それがスクリーンであることがわかった。 

 スクリーンの前には説教壇のようなガラスの演壇があった。そこに二人の人物がいた。ぼくはテロスのパーティで彼らと会っていた。われわれは古い友人として抱擁した。サンジェルマンは言った。「これは変移の家の教室だ。ティモシー、あとは能力のある友人たちに任せて、わたしは去ることにするよ。きみが一連のことを終えたとき、また会うことになるだろう」。彼はぼくの両頬にキスしたあと、いつものように去っていった。つまり消えたのである。

 こうしてぼくの五次元への変移がはじまった。それは楽しく、エキサイティングな時間だった、それが求められていたことだとしても。シシーラが恋しい時はあるにしても、退屈に感じることはなかった。すぐにまたいっしょになれることを知っていたからである。約束されたように、息子の誕生にはまにあうだろう。

 残念なことに、ぼくがどうやって五次元の身になったかを教えることは許されていない。特訓を受けたことだけは言っておこう。それは極秘中の極秘である。ただ、いつの日か人類全体がこのすばらしい、浄化的な体験をシェアすることができればと願っている。

 喜びはその主な一部である。退屈することは何もないのだ。持続する喜び、笑い、歌、音楽、ダンス、そして肉体と魂のゆるやかな結合は、名状しがたい幸福をもたらすだろう。

 親愛なる読者よ、本書で語ったことが信じられないなら、静かに坐って内なる声に耳を傾けてほしい。もしアガルタがほんとうに存在するかどうか知りたいなら、あなた自身の頭の中でこれを聞き、心の中でそれを感じてほしい。ぼくはあなたがそうすることを確信している。しかしなぜぼくを信じるのだろうか。その答えは自分自身で見つけてほしい。生きた証拠としてアガルタ人が地上に到達する時がやってこようとしている。

 ぼくは笑っている! まじめさとユーモアは共存できるのだ。ときには真剣さがあふれ出て、笑いを冷ますことがある。その逆はほとんどありえない。あなたの威厳を、つまり他者に影響を与える能力をいくらか軽くしてほしい。他者に影響を与えるとは、他者をコントロールすることであり、信仰や知識と距離を置くということである。

 内なる神を認識しながら、あなたは神の名を口にしない。神とはあなたが天国と呼ぶ場祖にいる人、あるいは勢力である。天国とは人が住まない気泡の星座や惑星の無限の集団である。神はどこにでもいる。神はあなたの周囲の将来のために保護したいすばらしい環境のなかにいる。神はあなたの家の外の動植物のなかにいるが、あまりにも自然で、あなたはもはやその存在に気づくこともない。

 この美しい、神聖な創造全体は人間によって破壊される。これは地球の表面の悲惨なイメージである。それを受け入れるべきだろうか。やはりできない。宇宙は反応している。われわれは知らないが、宇宙カウンシル(委員会)が存在するのだ。あるがままの姿を守るかわりに、愛すべき惑星地球が権力と富を求めるけがれた手によってばらばらになることをカウンシルは許さなかった。

 親愛なる読者よ、本書はあなたのなかの新しい意識を目覚めさせるために書かれたものである。だからこの困難な時代にあなたは世界を愛することができる。あなたがどれだけ助けることができるか、あなたの無関心さ、利己主義のあとに何が残されるか考えてほしい。愛と共感はわれわれが取るべき道の第一歩だ。ほかにあと六つのステップがある。つまり認識、思いやり、ゆるし、謙遜、理解、勇猛さである。これら六つの心の徳行を実践せよ。そしてあなたの体と魂を抱く変化のすばらしい風を感じるだろう。

 ぼく、ことティモシーは、第五次元とアガルタから、また第八大陸から、心から、情熱をこめて自分の物語を語った。すべての言葉は真実であり、わがミディアムであるマリアナを通して人類全体にもうひとつの国から挨拶を伝えることができたと思う。アガルタはすべての兄弟姉妹に挨拶し、将来、楽しい友情のこもった共同作業が行えることを楽しみにしている。




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