娘の名はタバサ? タビサ?
サマンサの娘の名はシーズン4まではタバサ、シーズン5以降はタビサに変わっている[シーズン4エピソード22「もてて、もてて困りたい(A Prince
of a Guy)」のクレジットはタビサになっているが、劇中エンドラは孫娘をタバサと呼んでいる]。ただし日本の吹き替えでは最後までタバサで通している。ウィキペディアさえもが(現時点で)タバサに改変されている。1974年にスピンオフのドラマ『タバサ』が作られているが、原題は『タビサ(Tabitha)』である。[biのiはシュワと呼ばれる曖昧母音(ə)なのでバともビともブとも聞こえる]
サマンサ役のエリザベス・モンゴメリー自身がタバサという名前を嫌っていたというから、彼女がプロデューサー(実生活の夫)に言って変えてもらったのだろう。彼女がこだわるのもわかる。聖書に登場するのはタビサであり(邦訳ではタビタ)、タバサではないからだ。タビサとは、アラム語(イエスが話していた言葉)でガゼルという意味だという。聖書では、タビタ(タビサ)という名のキリスト教初期の敬虔なキリスト教徒が亡くなるが、ペテロによって蘇る。
ヨッパにタビタ(これを訳すと、ドルカス、すなわち、かもしか)という女弟子がいた。数々のよい働きや施しをしていた婦人であった。ところが、そのころ病気になって死んだので、人々はそのからだを洗って、屋上の間に安置した。(……)ペテロは立って、ふたりの者に連れられてきた。彼が着くとすぐ、屋上の間に案内された。(……)ペテロはみんなの者を外に出し、ひざまずいて祈った。それから死体のほうに向いて「タビタよ、起きなさい」と言った。すると彼女は目をあけ、ペテロを見て起き直った。(『使徒行伝』第9章)
ガゼルでもドルカスガゼルという種類で、大きさはトナカイの半分(体長1m)くらい。トナカイよりも繊細でかよわい印象を与える。私はチベット高原でガゼルに似たブルーシープの群れに出会ったことがあるが、ブルーシープ(バーラル)はドルカスガゼルよりもやや大きいものの、同様の繊細な美しさを持っていた。
なおタビサ役は何代かにわたって双子(とくにエリンとダイアン・マーフィー)が演じているが、6シーズンから8シーズンはエリン・マーフィーだけが演じている。幼い配役を双子が演じるのは、アメリカではよくあることのようだ。わたしの大好きなドラマ『ミディアム 霊能者アリソン・デュボア』も末の娘は双子が演じた。幼児が演技をするのはむつかしく、撮影時に機嫌のいいほうが選ばれるのである。
サマンサの母エンドラの名は聖書の『サムエル記上』28章に出てくるエンドル(En-dor)の口寄せ(霊媒)から取られた。口寄せを魔女と呼べるかどうかとなると、微妙なところだ。