サマンサら魔女は死なない? 

 シーズン7のあるエピソードでエンドラはモナ・リザそっくりの絵を持ってくる。ただモナ・リザの顔がサマンサになっている。この絵を描いたのは本物のダビンチだという。サマンサそっくりだが、サマンサではなく、彼女の叔母だという。でも実際はサマンサなのではないかとダーリンは疑念を持つ。そしてサマンサが何百年も年を取らないのではないかと考える。

 別のエピソードで老人に変えられてしまったダーリンは、自分が年を取ったとき、若いままのサマンサは自分を愛してくれないのではないかと思い詰める。サマンサは、ダーリンが年を取るのに合わせて自分も年を取るといって老女に変身し、安心させた。

 サマンサの年齢が焦点になるのはシーズン1エピソード22「サマンサは二百才?(Eye of the Beholder)」である。ダーリンはクロークの中から古い肖像写真を発見する。それにはサマンサの肖像画とともに「セイラムの乙女1682」と書かれていた[セイラムの魔女裁判は1692年3月1日から始まる]。魔女なのだから、何百年も生きていても不思議ではない。1665年の生まれだとしたら三百歳ということになる。邦題が二百才になっているのは不思議だが(当時画面を簡単に見ることができなかったのだろうか)、ここでも原題の奥深さが邦題に感じられない。

 「見る者の目」とは、19世紀のアイルランドの女性作家マーガレット・ウルフ・ハンガーフォードの小説『モリー・ボーン』(1878)からの引用である。原文を訳すと「美は見る者の目の中にある」である。サマンサが何歳であろうと、ダーリンがサマンサを愛しているなら、サマンサは美しい、ということなのだろう。

 しかしショックを受けたダーリンはサマンサを問い詰める。「いったい誕生日はいつなんだ」。サマンサは答える、「六月よ、六月六日」。「いつの六月六日なんだ? 今、22なのか、24なのか」「もう少し上……」

 実際肖像写真が撮られたのが1682年だとしても、彼女が誕生したのが1665年頃とは限らない。すでにそのときに百歳かもしれないし、二百歳かもしれない。この秘密を知ってもサマンサを愛し続けたダーリンは気骨のある人間だったということである。