セクシーなセリーナは歌も踊りも得意
いとこのセリーナは、貞淑で明るいサマンサと見かけはそっくりだが(一人二役)、性格は真反対だった。いつも超ミニスカートをはき、いい男がいれば色仕掛けで迫った。個人的にはシーザーが(子守の魔女がシーザー・サラダを取り出そうと呪文を唱えたら、シーザーが出現した)呼び出されたエピソードに出てくるクレオパトラのセリーナがセクシーで好きだ[シーズン6エピソード4「ジュリアス・シーザー現る(Samantha's
Caesar Salad)」]。セリーナの役のときは、仕草やセリフも完全にコメディアンなのだが、その演技力はすばらしかった。当時ミニスカートがはやっていたようで、会社の受付嬢までが膝上30センチのスカートをはいている。セリーナはミニスカートで激しいゴーゴーダンスに興じ、ときにはヒッピーのかっこうをした。当時はそれがかっこいいと思われていた。
セリーナは、踊っても、歌っても(ギターを弾きながら歌う)かなりレベルが高かった。シーズン7に人気デュオがゲスト出演するエピソードがあるが、じつはこのボイス&ハートは当時本当に人気があったようだ。ビートルズ並みに人気があったモンキースに楽曲を提供していたことでも知られる。まわりでキャーキャー騒いでいる十代の女の子たちも本物のグルーピー(熱狂的ファン)だったようだ。相当有名だったにもかかわらず世間から忘れ去られているが、皮肉なことに『奥様は魔女』のおかげで半永久的に痕跡を残すことになった。
なおセリーナ役にはパンドラ・スポックスというクレジットが入っている。もしかすると放映当時の視聴者は、サマンサとセリーナは別の人が演じていると思ったかもしれない。パンドラ・スポックスはパンドラの箱(パンドラズ・ボックス)をもじった名前だ。[セリーナの最初の登場はシーズン2エピソード18「ベビー誕生(...And
Then There Were Three)」で、産婦人科の病棟のシーン]
サマンサには影武者がいたことも付記しておこう。メロディ・ジョイス・マッコード(1946-2004)はサマンサとセリーナが同時に出ているときなど、後ろ姿ですむときなどにサマンサを演じた。歳はエリザベス・モンゴメリーよりずっと若かったが、髪の色や姿かたちが似ていた。「もてて、もてて困りたい」では眠れる森の美女を演じている。
「サマンサ女王のヒッピー族(Hippie, Hippie, Hooray)」でサマンサに扮したセリーナはヒッピーのいでたちでクライアントのギディングス(ウォルター・サンド)に迫り、当惑させる。このウォルターは老齢に達しているがけっこう有名な俳優で、『市民ケーン』ではエンドラ役のアグネス・ムーアヘッドと共演している。