セイラムの大カヴン 

 ウイッチやウイッチクラフト、ウイッカに興味がある人なら、カヴンという言葉はおなじみだろう。カヴンはもともと魔女の集まりを指すが、ネオペイガニズムやウイッチクラフトを信仰する人にとっては、魔女の集会を指す。シーズン7のエピソード1から8まで8回にわたってセイラム特集が組まれている。じつはセイラムで百年に一回の世界魔女会議(ユニバーサル・カヴン)が開かれたのだ。正確には魔女や魔法使い(warlocks)の会議(convention)である。

 セイラムはもちろん魔女裁判で有名な町で、戯曲や小説、映画、テレビドラマに描かれてきた。もっとも有名なのはアーサー・ミラーの代表的な戯曲『るつぼ』だろう。発表当時、大きな話題となったのは、五十年代、マッカーシーの赤狩りが吹き荒れていたからだろう。戯曲は強圧的な17世紀後半の社会と現代社会の両方同時に批判していたのだ。

 テレビドラマではアニメのシットコム『シンプソンズ』や『クリミナルマインド』『アメリカンホラーストーリー』『バフィー 恋する十字架』などがセイラムの魔女裁判を取り上げてきた。ドラマ『タイムレス』でも主人公たちはタイムマシンで17世紀のセイラムに行っている。

 魔女狩りといえば本場はヨーロッパだが、アメリカにも魔女狩りはあったのだ。ヨーロッパではほぼ終わりかけていた魔女狩りフィーバーが、アメリカで隆盛を迎えていたのである。アメリカ建国の中心的役割を果たした清教徒の町で集団ヒステリーが発生してしまったのである。ピューリタニズム(清教徒主義)とはまさに厳格で潔癖な生活を送ることを言うのだが、それと真反対の魔女狩り、魔女裁判がおこなわれてしまったのは皮肉というしかなかった。

 シットコムの内容に整合性を求めても仕方ないことだが、ダーリンが「セイラムの乙女1682」と書かれた肖像画を発見してあわてふためいたことから、魔女裁判の前後にサマンサがセイラムに住んでいたのは間違いない。ただ20世紀のサマンサが魔法で17世紀に飛んでいくとなると、ばったり本人と出会ってしまうのではないかと気をもんでしまう。もちろん脚本家がそんな脚本を書くはずはないから、取り越し苦労ということになる。もしかするとイングランド、フランス、ドイツ、スカンジナビア、スペイン、ウンブリア(イタリア)、スコットランド、アイルランド、チャネル諸島など、魔女狩り・魔女裁判がおこなわれたところにサマンサの姿があったかもしれない。もちろんわが頭の中の空想世界の話だが。