コルシカのいとこと高麗キジ 

 コメディ女優として本領を発揮しているのはシーズン7エピソード11の「あなたが笑えばわたしも笑う」(The Corsican Brothers)だ。もちろんエリザベス本人は自分がコメディアンという固定観念で見られるのをひどく嫌っていたが。 

 娘が人間世界に浸りすぎるのをひどく嫌ったエンドラは、妙な魔法を娘にかける。魔女の世界で自由奔放に生きるいとこのセリーナの気持ちをわからせようと、セリーナが感じることをサマンサがそのまま感じるように呪いをかけたのである。これは原題の「コルシカの兄弟」から、アレクサンドル・デュマの同名小説にヒントを得たのはあきらかだ。コルシカの兄弟のように、セリーナの喜びや痛みをサマンサは感じるのである。 

 たとえばランチのとき、魔法界のセリーヌの影響を受けて無性に「高麗キジ」が食べたくなる。高麗キジ? わたしはあわてて副音声の原音を聞いてみる。サマンサはring-tailed phesantと呼んでいる。高麗キジはring neck phesantだから、名が似てはいるが、別物である。というか、尾白輪キジはこの世に存在しない。正直なところ、首白輪キジ(高麗キジ)を尾白輪キジと呼んで何が面白いのだろうか。高麗キジは実在するが、スーパーで買えるほど一般的な食材ではない。魔女が食べるのにふさわしい変わった食材ということなのだろう。しかし高麗キジという実在する珍しい名前を用いることで、もともとの脚本の趣旨が見えなくなってしまった。 

 血を分けたコルシカ兄弟のように、そっくりのいとこ同士のセリーヌとサマンサは感覚を共有するようになる。スポンサーの社長夫人ともうひとりの女性の「婦人会」は、セリーヌが取りついてニタニタしたり、夫に指図するサマンサに愛想をつかし、スティーブン家から怒って出ていく。このときのサマンサのひとり笑いをしたり、踊ったりする「奇人」の演技はすばらしいものがある。ニコール・キッドマンのような正統派女優にはここまでの演技はできない。