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南西の憤怒のラクシャの国は
千万十億の人食いの悪鬼が満ち溢れていた。
陸の果ての膨張する海のように
その力が増しているなら
赤面の人食い悪鬼がその国を支配しつつあるだろう。
空を飛び、海の底から飛び上がり
岩にも山にも邪魔されず
風のように疾駆し
それらは世界のいかなる地域にも満てるだろう。
すべての人を殺し
その血と肉を食い尽くすだろう。
すべての女を犯し、
人食い悪鬼の子孫にあふれるだろう。
ついにはこの世界は悪魔の国となり
悪徳だけの国となるだろう。
蓮華生はだれも悪鬼を抑えられないと知り
それは蓮華生しかありえないことを悟り
ガルダのごとく翼をひろげ
人食い悪鬼の国へ飛んでいった。
蓮華生はラクシャの王の意識を除き
からっぽになったその身体に入った。
輪廻の終わりまでそこに居続けるのだ。
巧みなわざで、尽きない悟りの心で、すばらしい行動で
彼は人食い悪鬼を調伏し、世界に幸福をもたらした。
その慈しみの心は無量である。
注記
オーム・アー・フーン・ベンザ・ペマ・シッディ・フーン
この著作において、私は髪飾りを取り、グル・リンポチェ、すなわち蓮華生という生の大海から水滴を引いた。
私が書いたのは、弟子たちの束の間の知覚に現れた本質の正確な解説である。
この物語はボン教の伝承のなかに語られたものである。
その視覚、聴覚、記憶、触覚によってこれを知った者すべてが
ただちに視覚において解放された蓮華の状態を会得できますように!
ボン教経典に語られた前世にしたがい、ミシク・ユンドゥン・チュンネがこれを書いた。
高潔であれ!
タシュン・ムツォク・マルロ
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