プトゥンの生涯、著作、時代
ガワン・サンポ 宮本神酒男編訳
プトゥンの輝きの生涯
実際のところ、プトゥンとは誰なのか? どんなできごとによって彼の生涯や時代が形成されることになったのか? この画期的な作品(プトゥン仏教史)以外に何か書いているのか? いまも消えない彼が与えたインパクトとは何なのか?
これらの質問に答えるために、私は喜んでオーバーミラー(最初のプトゥンの翻訳者)の序論から切り貼りしたいところだが、何ということか、その第1巻で、シチェルバツコイ(彼は翻訳者オーバーミラーを生徒と呼び、またソ連の科学アカデミーの会員を自認している)が情報を添えた序説は、わずか2ページにすぎない。
「彼(プトゥン)の伝記(ナムタル)を含む木版は私が所有している。それは著作全体の翻訳によるところが大きいチベットの歴史編集の起源を扱ってもいる序論のなかで、E・E・オーバーミラーが解析するだろう」
しかし何ということか、約束ははたされなかった。オーバーミラーは悲劇的な夭折を遂げてしまうのだ。(1901−1935)
プトゥンの伝記はD・S・リュエッグによって英訳された。私は興味を持つ読者にこの信頼に足る、重要な著作が届けばいいと思ったが、1966年、全34巻の「ローマ・オリエンタル・シリーズ」の一冊として刊行された。地方の図書館や書店で入手できそうもない大型本だった。
すべての時間を費やしてプトゥンの生涯や時代、影響についての研究に励み、著作をものにしてくれるような新しい仏教学者の世代が登場してくれるのを待ちながら、私は「捕捉2」にあるようなプトゥンの短い伝記をまとめた。この伝記は2008年にチベットで再刊された作品集とともに載せられたものである。「捕捉3」はこの善26巻の作品集の題目のリストとおなじ翻訳を含んでいる。この「捕捉2」「捕捉3」には、私がプトゥン研究に付け加えた唯一のオリジナル論文が含まれる。