地球内部への旅
世紀が変わって1906年、重要なウィリアム・リードの本、『極地の幻影』が出版される。この書は同時代の他の地球空洞説の本のようなフィクションとは異なり、この説の証拠をかき集めたまじめなものだった。北極、南極の探検隊から収集した証拠をとりまとめた最初の本だった。氷山の花粉や熱帯の種、北極に近い地方で出会った鳥やその他の動物といった話にリードは魅了された。こうした種や動物は地球内部の楽園から来るものとリードは考えた。
リードは、地球の地殻は800マイル(1300キロ近く)であり、内部は6400マイル(1000キロ余り)と見積もった。リードは言う。
「地球はうつろである。長い間探し求められてきた両極は幻影である。北と南のはしには穴があいているのだ。内部には巨大な大陸、海洋、山脈、河川がある。この新世界には植物や動物が生存している。そして地表の居住者には知られていない人種が生きているだろう」
ウィリアム・ガードナーは1913年に『地球内部への旅(副題:あるいは両極は本当に発見されたのか?)』を著した。ガードナーは、ユーラーのように、地球内部に内なる太陽があるのではないかと提唱した。1913年の本の出版は友人らの助力が大きかったが、1920年の第二版出版は、出版社からなされた。ガードナーはこのなかで、この本は20年以上のリサーチのたまものだと述べている。
『地球内部への旅』は詳しい図説の入った本だった。両極の穴と内部の太陽が示されたうつろの地球の図はよく見かけるが、そのもととなった図はここに描かれたものである。ガードナーが主張するところによれば、内なる太陽は直径600マイル(960キロ)であり、内なる太陽の外殻から地殻の内側までの距離は2900マイル(4600キロ)あるという。また両極の穴の直径は1400マイル(2200キロ)だという。地球の地殻は800マイル(1300キロ近く)の厚みがあるという。800マイルの地殻には岩の圧力がかかり、それによってマグマが産み出され、地表の火山活動へとつながっている。
ガードナーは、地球内部はあたたかく、熱帯のようで、文字通りパラダイスだと理論的に考えた。彼は地球内部への遠征隊の資金集めをしようとしたが、成功しなかった。
ガードナーはこの本の終わりに書いている。
「本気で北極を探索すれば、すべてのことが明瞭になるだろう。飛行船を使えば探索も簡単におこなえるはずだ。私の著書を読めばそこに証拠が示されている。1世紀以上も人の目にさらされてきたものばかりである。われわれはこんなにも盲目なのである」
うつろの地球はすぐにフィクションの世界に使われるようになった。それはエドガー・ライス・バロウズの『地球の核のターザン(地底世界ペルシダー)』にはじまるペルシダー・シリーズであり、パルプマガジンの多くのファンタジー小説だった。極論するなら、「アメージング・ストーリーズ」やその他のパルプマガジンのページは地球空洞説から成っていた。