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 桃棒、桃杖、桃枝を用いた揮撃邪崇は、桃木辟邪術のもっとも原始的な形態である。この種の法術は古代中国でずっと盛んだった。睡虎地秦簡『日書』「詰篇」は言う、帰る家のない「哀鬼」は人と友だちになると喜ぶ。哀鬼にまとわりつかれた人は飲食を取らなくなり、清潔を好み、顔色は蒼白で、生気が失われる。棘の錐と桃棒で病人の心臓部位を叩くと、哀鬼は二度とやってこない。

この書はまた言う、野獣や家畜が人と遭って話をすることがある。これは「飄風の気」がなす怪である。桃杖を用いてそれを打ち、草履を脱いでそれに投げつけると、妖怪は自ら消滅する。

また言う、もし家の中で休んでいる人がみな混迷状態に陥ったら、その家は住むのに適していない。かならず桃木で作った大杖で部屋の四隅と中央を叩く。同時にさまざまな法術をおこない、禍を免れることができる。

 漢代、年の終わりに逐疫儀式をおこない、そのあと朝廷は公卿、将軍、諸侯、顕宦貴族に桃杖を賜った。この種の桃杖は一般的な生活用品とは異なり、巫術道具だった。これらは顕宦貴族らが禍や咎(とが)を駆除するとき専用に用いられるものだ。