第2章 4 葦(あし)、棘(いばら)の用い方
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古代の巫術のなかで、アシ、いばらは桃木と組み合わせて使用されることが多かった。桃の棒とアシの箒の組み合わせ、桃の弧といばらの矢の組み合わせがまず思い浮かぶだろう。すでに述べたように、アシといばらは方士が常用する辟邪霊物(魔除け)なのである。この二つの霊物がほかにどのように利用されてきたか考察しよう。
アシにはいろんな種類が含まれる。高さは3メートルほどで、茎は中空、皮は薄く、白い。葭(アシ)、芦(アシ)、葦(アシ)などと呼ばれる。葦(アシ)と比べて小さく、中空、皮が厚く、青い種類は菼(タン
tan)、薍(ラン luan)、荻(テキ di)、萑(カン huan)と呼ばれる。もう一種類非常に小さい茎も空でないのが蒹(ひめよし jian)である。葦は別名であり、通称である。巫術の武器として用いられるのは葦と萑である。以下、便宜上アシに関しては芦葦と呼びたい。
アシ(芦葦)を用いて作った縄、すなわち古書にいう「葦索」「葦茭」は、もっとも早く辟邪霊物として用いられたアシの物品である。伝説によれば、神荼・鬱塁(しんと・うつりつ)は度朔山の大桃樹の下でアシ縄を用いて悪鬼を縛った。のちに黄帝はこれをまねて、アシ縄をかけて凶悪な魔物を御する呪術を作り出した。この有名な神話が意味するのは、アシ縄辟邪法と桃木辟邪法がおなじで、どちらも古い呪術ということである。
晋人司馬彪は『続漢書』「礼儀志」に言う。夏、商、周では夏五月に辟邪霊物をかける風習があったと。ただしかける霊物は次代ごとに異なっていた。すなわち夏人はアシ(葦茭)を、商人はタニシを、周人は桃梗をかけ、漢代の人はそのすべての礼を採用した。こうしたことからすると、アシの縄をかけて邪気祓いをする呪術は夏代にはおこなわれていたのだろう。戦国時代になると、大晦日と元旦にアシの縄をかける習俗は広く流行していた。本章第2節に『荘子』から引用しているつぎの一節はまさにその様子を表わしている。
「その上にアシの縄をかけ、かたわらに桃符を挿す。百鬼はこれを畏れる」。