(2)
漢代以来、犬を磔にすることによって邪気祓いするという習慣があった。後漢の鄭衆が言うには、『周礼』「大宗伯」中の疈辜は漢代の「犬の磔でもって邪気を祓う」に相当するという。晋の郭璞によれば、当時、路上でよく邪気祓いのために裂かれた犬の屍骸を見かけたという。漢代から晋代にかけて、犬を磔にして邪気を祓うことが流行していたということだ。これは習慣化していたので、磔ということばは邪気祓い儀式の代名詞にまでなった。『汝雅』「釈天」によれば「邪気祓いの儀式は磔」だった。
しかし犬を磔にすることによって、どうやって災禍を防ぐというのだろうか。古代の学者はかつて五行思想によって説明しようとした。唐の賈公彦は「犬の磔で邪気を防ぐのは、犬は西の金に属し、金は東の木、風を制するので、犬は風を防止する」と言う。犬と五行のうちの一行をあてるのは、戦国・秦・漢のときが分岐点だった。ある人に言わせれば犬は南方の牲であり、火に属す。『墨子』「迎敵祠」や賈誼『新書』「胎教」もこの説を支持している。ある人に言わせれば犬は西方の牲であり、金に属す。応邵『風俗通義』「祠典」は明確に「犬は金畜である」と断言した。ふたつの論が争い、後者が勝ったように思われる。すなわち賈公彦の「犬は西の金に属す」が優勢である。
犬は金に属し、風は木に属す(『周易』説卦)、そして金は木に克ち、犬は風を止める。中国の巫師は陰陽、五行、八卦などを使って巫術に合理性をもたせている。しかし実際それを応用するとなると、そうそうはうまくいかない。
犬を磔にして風(邪気)を祓うというのは、「村の四門で犬を磔にし、蠱の災いを防ぐ」のバリエーションである。この「犬を磔にして風を祓う」はさらに発展する。『本草綱目』巻四八引用の『感応志』は「黒犬の皮を焼き、これを掲げると、すなわち風やむ」と記しているが、「犬を磔にして風を祓う」の影響を直接受けているといえるだろう。