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『五十二病方』は精液を「男子悪」と称す。本書でも二度にわたって「男子悪」を傷口に塗ることによって痘痕(あばた)が残らないように予防することについて言及した。
葛洪『肘後方』に言う、人精(精液)、鷹尿白を火傷(火によるやけど)や燙傷(熱によるやけど)に塗れば、痛みを止めるだけでなく、治ったあと、傷跡もなくす。精液の神秘的な観念から後代の悪性の腫れまで、方士はつねにこれを霊異なるものととらえ、それから神丹を製造した。
李時珍『本草綱目』巻五十二は批判的に言う、「妖術家は愚人を惑わし、童女とまぐわい、女の精液(体液)を飲む。精(精液)と天癸(月経)を食べ、飲む。それを鉛汞(えんこう)と呼ぶ[鉛汞とは鉛と水銀。性命を意味する]。もって秘方となす。貪欲淫乱をほしいままにし、汚濊をおいしくいただき、天年(天が決めた寿命)に近づく。ああ、愚の骨頂である。誰が憂慮するだろうか」。
妖術家は人精(精液)を神化する。外側だけ見ると、伝統的な糞濊駆邪法術と異なっているようだが、歴史から見ると、結局もとは同じである。
古代の医家は奇妙なことを言う。「男子が陰毛を蛇に咬まれたなら、治すには、口に二本含み、汁を飲み、毒を腹に入れさせない」。
逆さになったり、横になって出てきたりした場合(手足が見えるとき)、治すには「夫の陰毛二十七本を焼き、大豆のような豬膏丸を呑む[豬=豚]。子供の手が丸薬を持って出てくる。すばらしい効き目である」。